元海将・香田洋二さん

 ミサイルは最新電子機器の塊です。定期的なメンテナンスが必要で、不具合があれば原因を探求して部品を替えなければならない。その手間が非常にかかるし、整備部隊の新設や弾薬庫の整備も欠かせません。ところが、防衛省は1月23日に「新たな重要装備品等の選定結果について」という文書を出していますが、ミサイルのライフサイクルコストについて全く算定していません。すべて見切り発車です。価格や利点などを精査したうえで最適なものを選定したので、みなさんの税金を使わせてください、というのが本来あるべき姿なのに、「追って沙汰する」という態度です。

 1%枠の中で、例えばF15戦闘機を年間に15機買いたかったのを10機に落としたり、燃料費を節約するために1カ月の飛行訓練を3分の2に減らしたりしてきました。2%防衛費は総花的なものばかりではなく、自衛隊の本来の機能を回復させることに優先的に使われなければなりません。

 ウクライナのゼレンスキー大統領の平時の行政能力はわかりませんが、ロシアの侵攻に対して戦おうと呼びかけて国民の強い支持を得ました。本当に必要なのは、真摯に国民に説明することによって国民の信頼を得ることです。そうしない限り、わが国の防衛も成り立たないということなのです。

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2023年3月3日号

[AERA最新号はこちら]