4月末に南北首脳会談、そして初の米朝首脳会談へ。対話が一気に動き出したウラで、日米韓の連携が乱れている。対北朝鮮外交が破綻した時、日本が迫られる判断とは。
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“Meeting being planned!”(初の米朝首脳会談へ準備は着々だ)
トランプ米大統領が3月8日に発信したツイートだ。直前に会った相手は韓国大統領府の鄭義溶(チョンウィヨン)・国家安保室長。5日に平壌で金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長と会談後、6日に「4月末の南北首脳会談開催」を発表し、ホワイトハウスを訪れた。
金氏が会談を望んでいると鄭氏から聞き、トランプ氏は5月までにと応じた。ただツイッターでは「金正恩は韓国の代表団と非核化について語った。北朝鮮は当面ミサイル実験もしない。大きな進展だが、合意ができるまで制裁はそのままだろう」とも述べている。
この急展開に日本政府は焦る。安倍晋三首相は9日、トランプ大統領と20回目の電話協議をし、「核・ミサイルの放棄へ北朝鮮が具体的な行動を取るまで最大限の圧力をかけていく。4月にも訪米し首脳会談をしたい」と記者団に強調した。
急ごしらえの対話は、破綻すれば一気に緊張を高める危うさをはらむ。誤算が重なれば「最悪の事態」を招きうるとみる日米韓の元政府関係者や研究者らは、シミュレーションに余念がない。そんな専門家らと意見を交わし、「最悪の事態」で日本が迫られる判断を考えてみた。
もし北朝鮮が朝鮮半島周辺で米軍や韓国軍を先に攻撃したとする。例えば、恒例の米韓合同軍事演習や、北朝鮮が禁輸制裁を逃れようと公海で物資を積み替える「瀬取り」への取り締まり強化に反発し、米韓の艦船などを砲撃する。この場合、国際社会も世論も米軍の反撃に理解を示すかもしれない。
それよりも厄介なのは「米国の先制攻撃」の場合だ。
ありえない、とは言い切れない。米国は、1993年の北朝鮮による核不拡散条約(NPT)脱退宣言に始まる第1次核危機で空爆寸前までいった。2003年には実際にイラクを空爆し、フセイン政権を崩壊させた。先制攻撃の理由は、結局見つからなかった「大量破壊兵器」だ。
対北朝鮮では「鼻血作戦」が浮上している。北朝鮮に鼻血を出させる程度の攻撃で米国の覚悟を示し、核放棄に向かわせる。1月末にビクター・チャ米ジョージタウン大学教授が米紙ワシントン・ポストに寄稿し、「トランプ政権の一部が支持している」と明かした作戦だった。