そして、重要影響事態との認定があれば、補給、輸送、修理・整備、医療、通信といった支援を「戦闘行為が行われている現場」以外で、自衛隊が基地や艦船、航空機をフル稼働させて実施できるようになる。

 この重要影響事態が収束せず激化すればどうなるか。日本が「後方支援」と言っても、北朝鮮は事実上の参戦とみるだろう。そうなれば北朝鮮のミサイル攻撃を抑え込むため、自衛隊は米軍との連携がさらに必要になり、日本政府は存立危機事態の認定へ動く。米軍への攻撃を日本への攻撃とみなし、運命共同体としての米国を集団的自衛権を使って助ける展開だ。

 ここで名実ともに日本は参戦となる。米軍への攻撃に自衛隊が対処しないと日本が危ういのが存立危機事態だが、そう判断すれば日本防衛の場合と同様、攻撃を排除するための武力行使までできることになる。

 安倍首相は安保法制の審議でこう答弁している。

「事態の推移により重要影響事態が存立危機事態の要件を満たし、存立危機事態が認定されることもあり得る」

 要は存立危機事態を認定して米朝戦争に日本が加わる“入り口”に、この重要影響事態の認定がなり得るわけだ。

 重要影響事態の認定はそれほど重い。だが、法律での定義は「放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」と実にあいまいな表現になっている。時の内閣の判断は正しいのか。成立時に国論が割れた安保法制の運用でもあるため、国会の事前承認が難航するかもしれない。

 かわりに、日本への攻撃が予測される「武力攻撃予測事態」と認定する手もある。米軍に重要影響事態と同様のメニューで支援でき、国会でも「日本を守るため」と承認が得やすい。ただし、支援対象となる米軍は、日本への攻撃排除に必要な準備をする部隊に限られる。朝鮮半島に向かう米軍との調整は混乱し、米国の不満は募るだろう。厳しい選択が迫られるのだ。

 重要影響事態認定への国会承認は「緊急の必要」があれば事後でもいい。だが、安保法制成立直前の自公両党などの合意書で、「国民の生死に関わるような極めて限定的な場合を除いて、国会の事前承認を求めること」と念も押されている。

 むしろそんな「極めて限定的な場合」には、一気に存立危機事態や武力攻撃事態の認定を迫られるだろう。剣が峰で政治がなすべき判断をめぐる突っ込んだ議論は、まだ国会でほとんどない。(朝日新聞専門記者・藤田直央)

AERA 2018年3月19日号

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