特に避けたいのが、「更年期離職」です。更年期に心身のつらい症状が出て仕事を続けられなくなり離職することをいい、その数を試算したところ、40~50代の女性でおよそ46万人、男性でおよそ11万人にのぼったという調査結果があります。また、更年期症状により3割以上の収入減となったのは女性全体で8.6%、男性全体で10.8%でした(図)。それまで積み上げてきたキャリアが断たれるのは極めてもったいないことですが、企業としても経験豊かな人材を失うのは損失でしかありません。個人も企業も更年期について知り、対策することで、そうした事態を避けられる可能性は十分にあります。
■更年期=ネガティブなイメージ?
企業研修において更年期のパートでまずお話しするのは、「身体のなかで何が起きているか」です。シンプルに言うと、男女ともに性ホルモンの分泌が減少する時期が更年期です。思春期や老年期と同じく人生の1シーズンを示す言葉で、誰にでも等しく訪れるものなのです。
具体的には、女性なら卵巣の機能が低下し、そこから分泌される性ホルモンの一種、エストロゲンの量が減ります。40代も半ばが近づくと、そろそろ生殖の役割を終える準備が始まり、徐々に閉経へと向かっていくのです。 女性の身体はそれまで、エストロゲンに守られてきました。もっとも大きな役割は子宮内膜を整えて妊娠の準備をすることですが、それ以外にも骨を作り、コレステロールのバランスを整え、自律神経を安定させ、肌や髪のツヤを作ります。月経後の約1週間はエストロゲンの分泌量が増えますが、この時期は体調がよく元気に過ごせるという女性が多いです。だからこそ、分泌されなくなるとさまざまな不調が起こりやすいのです。
男性の場合はテストステロンという男性ホルモンが減少し、それによる不調が出ることがあります。しかし女性のエストロゲンの減り方と比べると、なだらかな坂をゆっくり下るような減り方です。女性のエストロゲン減少は、人によってはグラフにすると急降下ともいえる角度を描くため、より不調が出やすい傾向にあります。