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 多くの女性が45歳から55歳ごろに「更年期」に直面する。しかし更年期=老化というネガティブなイメージがついてしまっているため、自身の更年期をなかなか認めたがらない女性も少なくない。そのため、なかなか治療につながらず、辛い生活を送ることになってしまう。産婦人科医の高橋怜奈さんは「更年期について正しい知識を持ってほしい」と自身の体を知ることの大切さを説く。(河出新書『50歳からの性教育』から一部抜粋・再編集)

【表】更年期障害と関係の深いテストステロン不足の症状とは

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■更年期で人生が変わらないために

 近年、更年期への注目度がこれまでになく高まっているのは、団塊ジュニアといわれる、1971~1974年生まれの世代が50歳前後になっていることと無関係ではないでしょう。その後少子化の波がきて現在にいたるため、この世代は日本の人口において最後のボリュームゾーンでもあります。親は団塊世代ですが、親子間のジェネレーションギャップのひとつに、更年期を迎える年齢になるまで働いている女性が多い、ということが挙げられます。そこで、かつては女性の個人のこと、もしくは家庭のなかのことと思われていた更年期が、現在は社会課題と認識されるようになりました。

 ここ数年は、企業への研修業務も増えています。現在は結婚、妊娠、出産、育児というライフステージの変化があっても女性が働き続ける時代です。しかし女性は日常のなかに月経や更年期といった、特有の健康課題を抱えやすくもあります。課題そのもので困ることもありますが、女性が困っていることが“見えない”状態となってしまっているがために生じる困難もあります。まずはそのことを企業単位で共有するのが、研修の目的です。

 事前に「職員に何を知ってほしいのか」を問い合わせると、女性の生涯をとおしてどの時期にどんな健康課題が発生しうるかを大まかに解説してほしいというリクエストが多いです。私はどこでお話しするにしても、更年期の女性、閉経後の女性が「いる」前提で臨みます。もしその時点でいなくても、いまの職員が働き続け、キャリアを積んでいけば、いずれその時期を迎えます。妊娠、出産、育児の制度は、改善する余地がまだあるとはいえ、社会からの要請に応じて整えられつつあります。これも結婚、妊娠を機に離職する女性が多い時代には考えられなかったことでしょう。これからは、更年期の女性が健康課題をどうクリアしながら働き続けるかということにも、より注目が集まると思います。

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誰にでも等しく訪れる更年期