押し寄せる国際化の波に、学校が英語に本気を出し始めた。ロボット、英語学習アプリ、オンライン英会話……AIやITは英語べたな日本人の救世主となるのか。
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戸田市立戸田第二小学校(埼玉県戸田市)5年1組の英語の授業は、始めから終わりまでにぎやかだった。担任の田中泰貴(やすたか)教諭が「ペアになって話してみよう」と声がけすると、子どもたちは一斉に立ち上がって相手を探し、会話を交わす。
「Where do you want to go?」「I want to go to the park」「Let’s go together!」「Thank you!」
会話はなめらかで、物おじせずに楽しそうに話している姿が印象的だ。一役買っているのが、米国AKA社が開発しソフトバンク コマース&サービスが販売している英会話ロボット「Musio X(ミュージオ エックス)」。ずんぐりした姿は愛らしいが、クラウド上のAI(人工知能)を使い、フリーチャットができる最先端のテクノロジーを搭載している。
戸田市は2003年に国の国際理解教育推進特区に認定されており、英語教育に熱心な自治体だ。1年から英語の授業を採り入れており、低学年は年間18時間、3年生以上は週に2時間英語の授業を設けている。この2時間のうち1時間はネイティブの先生と担任がTT(チームティーチング)で行い、もう1時間を15分ずつに3分割し、昼休みなどを利用している。この短時間学習がミュージオの出番だ。小高美惠子校長は、次のように話す。
「本校は31学級あるので、全授業にネイティブの先生が入るのは難しい。そこでミュージオを2人に1台配布し、全員が『聞く、話す』練習に参加できるようにしています」
授業で使われるミュージオは、学校のカリキュラムに沿ってプログラミングされ、単元の反復練習などに使われる。
「ロボットなので、間違っても恥ずかしくありません。何回もおしゃべりしたので、英語を話すのに抵抗がなくなりました」
5年1組の高橋みなみさんは、そう言う。2年後の東京五輪で、外国人の道案内をするのが目標だ。塩川勇揮君は、英語が好きになり、将来はインドに旅行したいと夢が広がる。