

「今年こそ走る!」と年始に固く決意されたみなさん、そろそろ挫折していませんか。そんなスランプの回避法を、金哲彦さんに聞いた。
今年1月3日。箱根駅伝を4連覇した青山学院大学の選手たちの躍動する肉体を見て思った。
「そうだ、ランニングしよう」
日没を前に外へ飛び出すと、近所には中年ランナーがわらわら。箱根駅伝、見ましたね?
「毎年、お正月になるとランナーが増えますね。『今年こそやるぞ!』と意気込む人が多いんでしょうね」
プロ・ランニングコーチの金哲彦さんが「正月ランナー」の心情を推し量る。
「決意は素晴らしいですが、正しい走り方を知らないと、足を痛めて挫折することもあるので注意が必要です」
耳が痛い。初心者ランナーが陥りがちな落とし穴を聞いた。
「学生時代以来の運動なのに、いきなりスピードを出すのはNGです。走るのに耐えうる筋肉がついてない状態では、故障の原因となります」
と金さん。中年のみなさん、これが若いころとの最大の違いです。昨夏から一念発起して走り始めた初心者ランナーの私(47)も、これで故障いたしました……。
毎日、デスクで座りっぱなし。一刻も早く凝り固まった体をほぐし、健康になろうと最初の1カ月で走り込んだら、足裏に激痛が走った。休んでいるうちに心も折れ、結局1カ月以上もサボってしまった。
久しぶりに運動する人は、ウォーキングから始めるのがいいそうだ。金さんは、
「走りたい距離をまずは歩けるか、試してほしい」
とアドバイスする。
歩き始めたときからランナーへの道は開けている。背筋を伸ばして、胸を開いて。
「骨盤が“立つ”のを意識し、肩甲骨を動かすように腕を後ろに引きながら歩くと、背中からお尻へと筋肉が連動して骨盤からスムーズに足が出る。全身を使うから体重や衝撃も全身で受け止められます」
きれいな姿勢でウォーキングができるようなら、いよいよラン。ここでも姿勢の基本は同じだ。肩甲骨まわりの筋肉と連動するお尻の筋肉を利用しながら走ることを意識する。
初心者に多いのが、「猫背」という。普段は肩甲骨を動かす機会などほとんどないため、可動域は狭くなっている。猫背だと背骨のS字湾曲が崩れ、骨盤が背骨側に倒れる「骨盤後傾」になるため、体幹のバネが機能しない。必然、すべての体重や衝撃を下半身中心で支えることになり、腰や膝、足裏などの故障のリスクは高まる。
……とはいうものの、自分がどんなフォームで走っているのか、実はわからない人は多いのでは? ランニングラボなどで本格的に検証できればベストだが、まずは家族や友人に走っている姿を前、横、後ろなどから撮影してもらってもいい。