「日本社会全体で見た場合、通常、非正規雇用の比率は55歳以上の高年齢層で多いのですが、大学教員の場合は研究者が流動し切磋琢磨しながら、さまざまな経験を積むことも重視しているため、一般とは逆に25~34歳に任期付き雇用が多い状況です」

 25~34歳の大学教員の非正規雇用は50%を超えている。研究成果に基づく競争によって研究レベルが保持される面は否定できないが、最も研究力のある若い世代にリスクを強いている実情も看過できない。

 背景には、1990年代以降の大学院重点化による博士号取得者増加に加え、正規研究職のポスト不足がある。04年の国立大学法人化以降、教員の定年延長が実施され、若手研究者の安定的なポストを一層狭き門にしている。

『博士漂流時代』の著者、近畿大学医学部講師の榎木英介氏(46)は、東京大学理学部卒業後、大学院博士課程まで進学したが、研究者としての将来に不安を感じ、病理医に進路を変更した。榎木氏は訴える。

「理系の研究職の多くはチームリーダーの教授の下、分業体制で実験を進めます。研究者の独創性が最も開花するのは20代から40代前半と言われていますが、多くがこの時期に才能の無駄遣いを強いられていると感じます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年2月26日号より抜粋

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