角川短歌賞に応募した作品も、6割が国連の歌で、4割がその他の歌だった。応募の形式として、未発表短歌50首を一篇の作品として構成を考え、タイトルをつけなくてはいけない。連載が終わったあと、短歌賞の締め切りとなる17年5月末までの半年間、寝ても覚めても歌のことを考え続け、タイトルは「ナイルパーチの鱗」とつけた。ナイルパーチはアフリカでよく食べられる白身の魚。初めてアフリカに行ったときにギラギラと照りつける太陽の下に並ぶ魚の生臭さが日本に帰ってからも忘れられなかったからだ。
結果は、冒頭に書いたように、見事、佳作を受賞することができた。それでも講評としては「国連の歌と日常の歌にギャップがありすぎる」という意見も多かった。知花さんは言う。
「うれしかったけど、まだまだ。今後の課題はたくさんあります」
17年10月には結婚もした。短歌が心の機微を詠むものであるなら、夫を得たことで歌も大きく変わるのではないか。
「変わると思う。独身のころ、恋の歌は満たされない思いを歌うことが多かった。こないだ結婚して初めて夫を歌に詠んだんですけど、面白おかしい歌しか作れなくて(笑)。いいのか悪いのか、です。これから妊娠したり出産したり子育てをしたり、女性としてのライフステージがいくつもあるわけで、また違う世界が見えてくる。そういう歌を残していけると思うと今からワクワクします。ぜひみなさんも短歌で自分の記録を残してみてはいかがでしょう」
(ライター・大道絵里子)
※AERA 2018年2月19日号より抜粋
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