現在、低価格な回線は「MVNO(仮想移動体通信事業者)」という事業者から提供されることが多い。有名なところでは、OCNモバイルONE、IIJmio、mineoなどが挙げられる。これらの事業者は、携帯電話回線自体はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのどれかから借り受け、その上でサービスとして携帯電話事業を行っている。安価で自由度の高いサービスを提供しやすく、月額数百円で使えるものも多い。
回線を借りている関係上、携帯電話事業者の回線品質やトラブル状況に依存する。例えば、NTTドコモ回線をメーンに使っている人が、NTTドコモから回線を借りているMNVO事業者を契約したとしても、「トラブル回避用の副回線」にはならないわけだ。
だから、契約するMVNOがどこの回線を使っているかを把握してから契約する必要がある。
また別の話として、楽天モバイルの場合、面倒な部分もある。原理上は楽天モバイルを副回線として使うこともできるが、楽天の場合まだエリア展開の広さに問題もある。そのため楽天自体の電波が届かない場所では、KDDIの回線を借りている。だから、楽天がKDDIのトラブルの影響を受ける可能性もあるわけだ。
1台のスマホに2つの回線を入れるのはそれほど難しくはないが、トラブル回避用にするには多少の知識は欲しい。その点、KDDIやソフトバンクの「副回線サービス」は、それぞれの事業者をメーンに使っている人ならば、自分のスマホで使えるかを確認して契約すればいいだけなので、多少ハードルは下がるだろう。
回線が切れることへの対策がどうしても欲しい場合、多少勉強するか、それも事業者に委託するかのどちらかが選べる……と考えるのがいいだろう。
どちらにしろ、月額で数百円がかかることには変わりない。その点を考えた上で、契約を検討して欲しい。
西田宗千佳(にしだ・むねちか)
ITジャーナリスト。1971年、福井県生まれ。IT、通信産業、電機会社などの分野を中心に、新聞、雑誌、ネットメディアなどに執筆活動をしている。著書に『世界で勝てるデジタル家電』、『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか 「スマホネイティブ」以後のテック戦略』、『メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略』など。