佐藤氏は「今後のビジネスで証券と銀行の関係は重要になる」と語る。偶然だが坂井氏も同じ日本興業銀行の出身(撮影/写真部・小山幸佑)
佐藤氏は「今後のビジネスで証券と銀行の関係は重要になる」と語る。偶然だが坂井氏も同じ日本興業銀行の出身(撮影/写真部・小山幸佑)
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坂井氏(右)の趣味は幅広く、愛犬のティーカッププードルとの散歩や週末のスポーツジムでのリフレッシュも (c)朝日新聞社
坂井氏(右)の趣味は幅広く、愛犬のティーカッププードルとの散歩や週末のスポーツジムでのリフレッシュも (c)朝日新聞社

 「本業」の融資で稼げなくなり、銀は事業の枠組みを一新する方向に進む。その象徴となる社長人事に、みずほフィナンシャルグループが踏み切った

 本人が「想定外」と語れば、銀行業界も「意外」と驚いた。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)が1月15日に発表した、次期社長に坂井辰史(たつふみ)・みずほ証券社長(58)を充てる人事だ。4月1日に就任する。社外取締役で構成する指名委員会の全会一致で決まった。佐藤康博・現社長から「運命というか天命と思って引き受けるべし」と強く言われ、決心したという。

「意外」と受け止められたのは、みずほ内部も含めて銀行業界の多くが佐藤氏の続投とみていたからだ。交代の理由を佐藤氏は「かなり早くから退任の意向を決めていた」と語った。みずほ役員も「本心だと思う」と明かす。それでも「真相は何だろう」と、情報収集に走る関係者もいる。かつては坂井氏が佐藤氏よりも7歳若い年齢差を根拠に「次の次」の社長候補ととらえる説も流れていた。

 もうひとつの「意外」は時期だという。みずほは3千億円以上を投じ、次期システムを完成させた。佐藤氏が来年度以降の運用開始を見届けると思われていた。みずほは過去に2002年、11年と、ATMも使えなくなる大規模なシステム障害を引き起こした。万が一、今回も問題が発生すれば、「トップの引責辞任は間違いない。短命政権に終わることになる」。

 これが業界の一致した見方だ。実際に2回目の障害で頭取が退いた前例もある。

 システム移行を指揮する次期社長は、まさに重責。坂井氏も「身に余る」と表現したほどだ。さらに求められるのは、事業の枠組みを一新し、収益構造を転換すること。

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