実はこの麦飯に、元気な腸内細菌を育てる秘訣があった。麦飯は、白米にはほとんどない食物繊維が豊富なことで知られる。それでなくても食物繊維にのせて、腸内細菌のいる大腸まで栄養が届きやすいほか、麦飯には水溶性の食物繊維と、不溶性の食物繊維の両方が、バランスよく含まれていることもポイントとなる。
とくに水溶性のほうの食物繊維は分解されやすいため、腸内細菌たちを喜ばせる絶好のエサになる。大麦には、この「腸内細菌まっしぐら」の水溶性食物繊維も、ゴボウや納豆の数倍は豊富に含まれている。
効能を知っていたのか、それともたまたまか。ほかに家康の好物とされるものには、菌にまつわる発酵食品が多い。そのツートップと言えるのが、大豆の発酵食品「八丁味噌(豆味噌)」と「浜納豆」だ。どちらも酵素や乳酸菌を含み、高い抗酸化作用があることでも知られる。
「また大豆や味噌に含まれているトリプトファンは、心を落ち着かせるセロトニンを増やし、レシチンは記憶力に効くと言われる。必須アミノ酸などが戦国武将にとって不可欠でした」(同)
豆味噌では、季節の「五菜三根」(5種類の野菜と3種類の根菜)を使った具だくさんの味噌汁がお気に入りのレシピ。三河地方でしか流通していなかった八丁味噌を、江戸城に移った後も、お取り寄せして味わっていたと言われている。
また浜納豆は、麦飯にふりかけて食べたほか、「戦のときなどは懐に携帯して、胃腸薬代わりにときどき口に入れていた」そうだ。まあ、400年前のフリスクみたいなもんか。(ライター・福光恵)
※AERA 2018年1月29日号