
世界的に有名なハイブランド・ブルガリのCEOであるジャン-クリストフ・ババンさんが来日し、AERAの表紙を飾った。日本市場にかける思いなどを聞いた。
午前の便で成田に着いて、そのまま表紙の撮影場所へ。フロアに姿を現すと、一気に場が華やいだ。
ローマ発祥のブルガリは、世界トップのラグジュアリー企業体LVMH傘下のハイブランド。そのCEOと聞けば、数字に厳しいシリアスなトップと思いきや、開放的な笑顔で相手を引きつける。エネルギッシュに世界を回り、今回の東京滞在は2日。「たった2日ですか?」と聞くと、
「むしろ長いくらい。北京に1日出張なんてザラですから」
フランスの弁護士の家に生まれ、子ども時代の夢は宇宙飛行士。しかし、エリートの定石通り、名門ビジネススクールでMBAを取得し、フランス海軍で兵役に就いた後は、ビジネスマンの道へ。
プロクター・アンド・ギャンブル、ボストン コンサルティング グループなどを経て、2000年にLVMHウォッチ&ジュエリー部門傘下のタグ・ホイヤーCEOに就任。売り上げと収益の拡大、ブランド力強化の功績を買われ、13年に同じLVMHグループのブルガリCEOに抜擢された。
日本の市場に懸ける思いは熱い。
「数からいえば中国も重要ですが、日本は美的な感性にすぐれた、特別な市場。すばらしいアーティストやクリエーターがたくさんいて、刺激的です」
その言葉を裏付けるのが、世界で活躍する日本女性を称える「ブルガリ アウローラ アワード」や美術展だ。昨年末は東京・六本木ヒルズで、ブルガリを象徴するデザインモチーフ「蛇」をテーマにしたアート展を開催し、漫画家・荒木飛呂彦らとのコラボ作品を展示した。
ローマとスイス・ローザンヌに住まいを持ち、プライベートでは5人の子どものお父さん。
「だからせっかく東京に来ても、2日で帰るんです。週末に間に合うようにね」
経営手腕もさることながら、働き方改革でも、お手本にしたい。(ジャーナリスト・清野由美)
※AERA 2018年1月29日号