



戦後70年前後から様々な視点で描かれた作品が作られ、2017年は9本のホロコーストやナチスをテーマにした映画が公開された。
ヘブライ語翻訳の第一人者、母袋夏生さんは仕事柄、文字情報を補完するためにホロコースト関連映画を見ることが多い。2016年は7作。
「例えば、ナチス親衛隊SSの帽子や記章は階級によって異なります。映画はそういう細かいところも割と忠実に再現しているので参考になる。すでに知られた事件でも新しい事実が出てきたり、新しい視点で描いていたり。映画は知らなかった史実を知る機会。極東の国にいる私たちには知らないことがたくさんあります」
17年8月から公開されている「ハイドリヒを撃て!『ナチの野獣』暗殺作戦」でも、母袋さんが書物を通して知っていたラインハルト・ハイドリヒは、「ユダヤ人問題の最終的解決を立案、合議し実行した人」だった。
「彼がチェコで行った恐怖支配や大量処刑、暗殺計画の詳細も新たに教えてもらいました。映画は文字情報を深めてくれる手段としてありがたい。思い込みや過剰表現もありますが、歴史の細部を具体的に知ることができます」(母袋さん)
筆者がナチス関連映画の公開本数が気になり始めたのは10年くらい前から。特に、戦後70年前後から様々な視点で描かれた作品の公開が相次ぎ、17年は9本の映画が公開された。「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」は、ナチス戦犯の告発に執念を燃やすドイツ人検事フリッツ・バウアーの闘いを描いた歴史サスペンス。「ヒトラーへの285枚の葉書」は息子の戦死をきっかけに、夫婦が命を顧みずヒトラー批判を書いた葉書を街中に置いて歩く。
順次公開中の作品にはまず、13歳の少女ファニーがリーダーとなり、9人の子どもたちがナチス支配下のフランスからスイスへ向かう「少女ファニーと運命の旅」。「ブルーム・オブ・イエスタディ」はナチスの戦犯を祖父に持つ男と、その犠牲者となった祖母を持つユダヤ人女性が恋に落ちる姿を描いた野心作だ。「永遠のジャンゴ」はナチス支配下のフランスで音楽を武器に闘った天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを描く。