なぜ日本でホロコーストやナチス関連映画が次々と公開されているのか。

 大きな理由はもちろん「収益が見込めるから」だ。「ヒトラーに屈しなかった国王」を配給したアット エンタテインメントの藤島博章さんは、「3年ほど前からこうした映画を意識して買いつけするようになった。05年に公開された『ヒトラー~最期の12日間~』がドラマ作品として良い成績を収めたことが心のどこかにあった」

 と言う。メインの客層はリタイアした男性層が中心だが、作品によっては母親層や若者層にも訴求できる。DVDなどの2次使用もあり「手堅い」のだ。

「昔だったらアクションやエンタメ作品でしたが、今はテーマがしっかりある作品のほうが良いのではと感じています。ナチス関連映画をよくご覧になる方々は仲間うちで『あれ見た?』と情報交換し合い、いろんな作品を通して歴史的背景を埋めていく。知識欲を満たす楽しみもあるようです」(藤島さん)

 もっとも、こうした映画を多く見られるのは、多くの作品が作られているからでもある。それが「各国の政治に対する漫然とした不安が作らせているのでしょうか」(藤島さん)と、作り手のきな臭い時代への抵抗だとしたら、「映画は物事を違った角度から見せてくれる。映画はすべてに影響を及ぼすことができる」(駐日イスラエル大使館のイリット・サヴィオン・ヴァイダーゴルン公使)だけに、映画を見ることが、不穏な時代の希望に繋がるのかもしれない。

 18年も「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」「ソビボル(原題)」などが公開予定だ。(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2018年1月1-8日合併号