「東の東大、西の宝塚」
1千人の受験者に対し、合格するのはわずか40人。女の子の憧れ、宝塚音楽学校は今も昔も“狭き門”だ。2017年7月、宝塚受験対策サイト「Grant sienne」が立ち上がるや、たちまち話題に。それもそのはず、これまで「宝塚受験のノウハウ」は広く一般に流通せず、情報を得られるのは身近に宝塚関係者がいる人や、対策塾のある関東や関西の一部地域の人に限られていたからだ。
サイトを開設したのは元タカラジェンヌの瞳ゆゆさん(31)。
「日本全国、どこに住んでいても等しく宝塚受験の情報が手に入るようにしたいと思いました。情報がないため夢をあきらめたり、不安を抱えたまま試験に臨む人をなくしたいのです」
動機は自らの経験と結びついている。瞳さんは福岡県出身。小学6年生のとき、初めて宝塚の舞台を見た。華やかで夢のような世界に魅了され、宝塚音楽学校に入りたいと思ったが、情報が全くなかった。今のようにSNSも発達していなかったため、情報入手の手段もない。
受験科目がバレエと声楽と面接であることがわかるとバレエを習い始め、中学3年のとき、受験対策塾の存在を初めて知る。新幹線で片道3時間かけて訪ねると、衝撃を受けた。
「宝塚を目指す人たちは、3歳からバレエを始め、小学校高学年から声楽のレッスンを受けるのがふつう。自分のスタートの遅さに愕然としました。バレエにしても、試験でアピールするための独自のポイントがあることを知りました」(瞳さん)
月1回、兵庫県宝塚市にある対策塾に新幹線で通い、02年、中学3年の初受験で合格。娘役として8年間舞台に立った。
宝塚の受験科目は09年から、1次試験は面接、2次試験は面接・歌唱・舞踊、3次試験は面接・健康診断に。受験者は1次試験の面接で、1千人から400人に絞り込まれる。面接の時間はわずか30秒。願書につける写真が重要だと、瞳さんは言う。