
画家、絵本作家の安野光雅さんが手掛けた『鶴亀高校 つるかめざんの歌 校歌より』(岩崎書店)。もしも動物たちの学校があって、校歌を歌ったら……。安野さんが想像をふくらませて作った空想の校歌の詞に、絵を描き下ろした一冊だ。著者である安野さんがAERAのインタビューに答えた。
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初夢で、もしもあなたが鮭となり、石狩川を遡っていたとする。鮭に生まれて悔いはない。でも鮭とはいえ、もう少しベンキョウしたかったと思ったとき、寮歌が響く。
「なつかしき川 石狩の
連なる山に 雪降れば
われらは向かう 岩の道
あの流れこそ 故郷なれ」
鮭冥利に尽きるなあ。頑張って産卵するぞ。
「いざ帰りなん 故郷へ
よし塩鮭と はてるとも
わが運命を 誇るべし
ああわれら 鮭学部」
作詞者は安野光雅画伯。「北海道水産大学鮭学部学生寮」の寮歌である。もちろんそんな学部、寮歌はない。ホタル、ヒキガエル、平家蟹、たこ、スッポン、オオカミ、山椒魚、河童らの学校も空想、校歌をつくり、素敵な絵を描き下ろした。こうしてできたのが校歌(画)集『鶴亀高校
つるかめざんの歌 校歌より』である。
「いろいろ嘘の校歌を作ってきたんですよ。そのうち、土方歳三の故郷の町の小学校から校歌を作ってほしいといわれた。本当のは作らないと言ったけど粘られて。NHK『みんなのうた』にどうかという話もあったんですよ」