ぜん息のひどいのって、横になれないんですよ。横になると呼吸ができなくなる。3カ月ぐらい、夜中もずっと座っている状態になりました。それで体調が完全におかしくなって、そのころのことはあんまり記憶がない。播磨の近くには大きな病院もないし、和光に異動することになりました。

■遊牧民のように装置を持って旅をする

――埼玉県和光市は理研の本拠地ですね。

 ええ。すると、理研に導いてくれた物性研の先生が「和光に戻ったのなら、東海村の装置の面倒を見てくれないか」とおっしゃった。ご自分は放射光に専念したいから、と。もともと、それほどユーザーのいる装置ではなかったので、ゆっくりのペースで仕事ができた。その後、北海道大学の先生がここに新しい装置をさらに加える3年間のプロジェクトを立ち上げて、私もその下に入って元の装置の高度化に取り組みました。これで本格的に研究開発に戻れたっていう感じでしたね。

――東海村って、和光から遠いですよね。

 外環を走ったらすぐですよ。中性子実験をする人は、中性子線のあるところならどこだって行きます。フランスでもアメリカでもオーストラリアでも、それこそ遊牧民のように、自分のサンプルなり装置なりを持って旅をするんですよ。

 >>【後編:「いつも男の人を養っちゃう」女性物理学者が2度の離婚を経て手に入れた「恵まれているなぁ」と実感する日々】に続く

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高橋真理子

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ)/ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネータ―。1956年生まれ。東京大学理学部物理学科卒。40年余勤めた朝日新聞ではほぼ一貫して科学技術や医療の報道に関わった。著書に『重力波発見! 新しい天文学の扉を開く黄金のカギ』(新潮選書)など

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