「すごく褒めていただいて、『おもしろうてやがて悲しき、という喜劇の本質を捉えている』って。それからいろいろ言ってくださるようになりました。僕はそれまで萎縮してしまっていて。大先輩ですし、日本喜劇人協会の会長ですし」

「やがて悲しき」と小松さんが言うように、本書には大家さんが体調をくずした時のことや、大家さんが話す戦争のことなども描かれている。矢部さんと鹿児島県の知覧特攻平和会館を訪れるエピソードからも大家さんの戦争への思いが伝わってくる。

 大家さんは、本書のヒットをどう思っているのだろう?

「テレビで紹介されているのなんかも見てすごく喜んでくれて、それはうれしいですね。でも、いま大家さん、ノーベル文学賞を取ったカズオ・イシグロさんに夢中で『この本買ってきてほしいの』ってメモ渡されて買いに行って、『オススメは?』って聞かれて検索して……。僕の本のことよりもカズオ・イシグロの話が多いですね」

(ライター・濱野奈美子)

AERA 2017年12月18日号

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