とはいえ政治でもっとも重要なのは「心」、すなわち「体」と「技」を維持する持続可能性です。資源がないなかで、まだコストが高い自然エネルギーをどう普及させるか。人口減少や老齢化といった厳しい状況で、財政をどう健全化させるのか。GDPを引き上げるのに借金を増やすのは本末転倒です。

――安倍首相は9月、プライマリーバランス(PB=借金返済を除く政策支出を税収や税外収入で賄うこと)を20年度に黒字化する財政健全化目標について、「達成は不可能になったと思う」と述べていた。そのうえで11月には補正予算の編成を指示した。

 自民党からいろいろな意見が出てきました。教育では「こども保険」や「教育国債」。しかし、前者は社会保険に上乗せするので従業員や企業に負荷が偏る。後者は、それこそ未来の国民全員に背負わせてしまいます。

 経済同友会が15年に発表した試算では、PBの黒字化には社会保障費を年5千億円減らしたうえで、消費税率を17%まで上げる必要がありました。自民党は10月の衆院選で10%に引き上げると公約。方向性はいいのですが、それでは終わりません。

 野党も「増税凍結」などと訴えるだけで、具体的、建設的な政策がない。数値に基づいて精緻な議論が必要な時期に至っても、与野党ともにポピュリズム(大衆迎合主義)に陥り、目の前の選挙に勝つことで精一杯。この状況が、いちばん憂うべきだと感じます。憲法改正の議論の過程で明確な「国のかたち」を描いてほしいと思います。

(構成/編集部・江畠俊彦)

AERA 2017年12月18日号