業界紙「マンション管理新聞」が2019年に、管理会社30社を対象に調査したところ、約7割が採算が取れないことなどを理由に管理組合との契約を辞退したことがある、と答えている。
■拒否が増える理由とは
拒否が増える背景の一つには、管理にかかるコストの上昇がある。
マンション管理人や清掃員の最低賃金が引き上げられたことなどで、人件費が上昇。管理費に転嫁しようとしても、組合側が値上げに応じられず、さらに修繕積立金の残高が少ないことなどから、解約に至るケースが多いという。
大手管理会社の担当者は「清掃や警備などのコストが増え、日頃の管理業務では利益が出ない。その代わりに、日々の修繕工事や十数年ごとにある大規模修繕工事を請け負うことで埋め合わせる構造になっていることが多い」とし、「修繕費用の積み立てが少なく、収益を得るチャンスが少ない組合は、切り捨てることもある」と明かす。
■増える管理費、背景にはある法律
東京カンテイ(東京)によると、首都圏の新築マンションの管理費は、19年までの直近10年間で約18%上昇した。
高騰の背景の一つに、管理人らの人材不足がある。
かつて、マンション管理人は「シニアの第二の働き口」で、60 代前半で定年退職した人たちが多く採用されていた。ところが、13年に施行された改正高年齢者雇用安定法で、希望者全員を65歳まで雇うことが企業の義務に。定年退職者の採用が難しくなった。
「マンション管理業協会」が管理会社を対象に実施した調査(2017年)によると、回答した会社の8割が「(直近)3年以内で採用が難しくなってきた」とした。その理由として「給与や時給単価が低い」「売り手市場」「定年の引き上げ」が、いずれも6割を超えた。
全国マンション管理組合連合会の元会長、川上湛永さんは「更新拒否されているのは、小規模で築年数を経たマンション。古いマンションほど、年金暮らしの住民も多いため管理費の値上げに応じにくく、管理会社が決まらなければ放置状態にもなりかねず、危険」と指摘。「建物も住民も老いる中、管理会社も利益を出しにくくなっており、更新拒否は今後も増える可能性もある。今後のマンション管理の大きな問題だ」と話す。