ごみ集積所の管理、植栽の手入れ、施設のメンテナンスなど、暮らしにまつわるさまざまな作業を管理人に任せられる手軽さは、マンションの魅力の一つだ。しかし最近は、マンションの老朽化で管理会社から契約更新を拒否されたり、住民の高齢化が原因で理事のなり手がいなくなったりし、マンションの運営そのものが立ちゆかなくなるケースが日本全国で起き始めている。あなたのマンションは大丈夫か。(朝日新書『朽ちるマンション 老いる住民』から一部抜粋)
* * *
■築43年「うまみ」なくなった?
「会社の事情もあり、もう契約の更新はできません」
2020年1月、川崎市内にあるマンションの管理組合の理事長の男性は、管理会社の担当者にこう言われた。5年ほど前から契約しており、「青天のへきれき。かなりショックだった」と話す。
更新拒否の理由について理事長は、築43年と古く、管理会社にとって「うまみ」がなくなったためではないか、とみる。
このマンションの管理組合では、修繕工事の際、この管理会社からの見積金額が高いとして、他の業者に依頼することが多かった。また、修繕積立金の残高も少なく、今後の工事も見込めなかった。関係者は「こうしたことが更新拒否の理由では」と指摘する。
理事長の男性も、「管理会社にとって利益になる工事を受注できず、もうからない管理組合との付き合いはしたくない、との意思表示だと感じた」と振り返る。
解約された後、数社に打診し、なんとか別の管理会社が見つかった。
「このまま見つからなければ自主管理になり、不安は大きかった」と話す。
管理組合のコンサルタント業務などを行う、「メルすみごこち事務所」(東京)の社長でマンション管理士の深山州さんは、「大手・中堅の管理会社から契約の更新を拒否されたと相談を受けるケースが、ここ数年で急増した。これまでの業界常識からして前代未聞」と話す。全国的な傾向だが、特に都市部の郊外にあるマンションで顕著だという。