


地方から上京し音楽活動を続けるバンドマン。音楽性や活動に影響を与える「地元」との関係とは──。ライター・松永良平氏が読み解く。
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人気ロックバンド「B'z」が今年7月にボーカルの稲葉浩志の地元である岡山県津山市で行った凱旋ライブ、「氣志團」が9月に地元の千葉県で主催した音楽フェスティバル・氣志團万博などはニュースとなり、大きな話題を呼んだ。
自らを育んだ地元への愛憎や距離感をバネにして上京し、音楽活動を続けるバンドマンは多い。そうした決意や葛藤は、音楽の世界に限らず、大都市で仕事をして生活する、すべての地方出身者の心境に何らかの形で作用している。
<ロックと地元>というテーマについて、青森、北海道、福岡、千葉と地域性が異なる4組のアーティストに話を聞いた。それぞれの地元への思いや、そこから自然と溢れ出す音楽に対する気持ちが興味深い。
まずは青森県弘前市の県立弘前高校で同級生だった和嶋慎治(51)と鈴木研一(51)によって結成され、デビュー28年目を迎えた「人間椅子」。
妖怪的な怪異キャラと津軽弁を交えた歌詞、トリオで生み出すハードな音楽性で根強い人気を得てきた。10月4日にリリースされた通算20枚目の最新アルバム「異次元からの咆哮」(徳間ジャパン)のジャケット写真は、弘前のねぷたまつりを象徴するねぷた絵師、三浦呑龍による本物のねぷた絵が使われている。
「僕らは小さい頃からねぷたを見ていたから、こういう変わった格好をしたくなるのかな、と薄々は思っていました。特に弘前のねぷたには人間の闇を見せるようなところもある。ねぷた囃子の独特なノリの重さも、リフを中心としたロックをやるうえでは非常にいい意味で影響を受けているんですよ」(和嶋)
「和嶋くんの中には津軽三味線の影響もあったと思う。ハードロックのギターソロでのペンタトニック(五音音階)は、伝統的な津軽三味線でもよく使われているしね。ジミヘンを聴いたときも、『お、津軽三味線だ!』って思った」(鈴木)
とはいえ、2人が本格的にバンド活動を開始したのは、大学進学で共に上京してから。若い頃は、郷里が好きになれない部分もあったという。
「年を重ねるごとに表現を通じて、だんだん『あ、自分の田舎は豊かだったんだ』と気づかされました。東北は、人間の感情がむき出しで、嫉妬も強い。でも、そこに立ち返ることで表現に濃淡が出せるんです」(和嶋)
13年前に加入したドラマー、ナカジマノブ(51)は、東京都杉並区高円寺に生まれ育った生粋の東京っ子だが、2人への関わり方が面白い。