写真=情報通信研究機構(NICT)提供
写真=情報通信研究機構(NICT)提供
ビッグデータを活用したサービス「ライフスタイル認証」(AERA 2017年12月11日号より)
ビッグデータを活用したサービス「ライフスタイル認証」(AERA 2017年12月11日号より)

 世界のビッグデータ研究は、個人向け融資の信用力審査を行うスコア・レンディングのように属性から分類することが主流だが、個人の関心や行動に合わせて最適化させる「パーソナライズ」に特化し研究する動きもある。東京大学大学院情報理工学系研究科・特任准教授の山口利恵さんが来年度のサービス化を目指すのは、パスワードの代わりに生活習慣のデータから本人を認識する「ライフスタイル認証」だ。

【写真】「ライフスタイル認証」とは

 今はネットショッピングの決済をはじめ多くの場面でIDやパスワードを入力して認証する作業が必要だが、普段通りの生活をしているだけでその手間が省ける画期的なサービスなのだ。

 それだけではない。万が一、パスワードを盗まれたりハッカーの被害にあったりした場合は、普段の行動パターンと違うためログインできなくなり、不正使用のリスクも軽減される。将来的には、よく通うコーヒーショップなら近づくだけで先回りしてオーダーしてくれる「御用聞き」のような対応や、行動パターンから認知症を発見するなどの応用も可能だ。

 ただ、便利さの半面、ユーザーは位置情報や運動量、電波(Wi-Fi)やIPアドレスなど、自分に関係する多くのデータを提供することが必要になる。

「データ提供の合意画面を分かりやすくしたり、ユーザーが途中で嫌だと思ったら中止できるのはもちろん、データは過去にさかのぼって消去するという仕組みを、社会全体のすべてのサービスでできるようにすべきだと思っています」(山口さん)

 国内では、データを提供する個人の権利について関心が薄いままだが、EUではプロファイリングに異議を唱える権利や、重要な決定がコンピューターによる自動処理のみに基づかないようにすることなどを定めた「一般データ保護規則(GDPR)」が2018年5月から施行されるなどの動きも出始めている。

 そして私たちが最も注意しなければならないのはこれだ。

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