

数学が苦手な人が理系を受ける場合には、戦略が必要というのは武田塾の林尚弘塾長だ。同塾は個人に合わせた勉強のやり方を指南することで、合格実績を伸ばしてきた。
「数学は他教科に比べ、時間あたりの点数の伸びが一番低い教科。数学が苦手ならセンターレベルに留めておいて、他教科を伸ばしてカバーしたほうが効率がいい」(林さん)
国立大の理系でもセンターをクリアできれば、山形大理学部、宇都宮大工学部、山梨大生命環境学部などに、数学を回避できる学科がある。
負担が格段に上がる数IIIを回避するには、公募推薦を狙う手もある。数IIIまで終わらないことを見越して、数IIまでを範囲としている大学が多いからだ。理系と文系が融合している学部を狙う手も。同志社大の文化情報学部は文系型と理系型の入試があり、履修科目は入学後に決める。つまり文系で入り、理系で卒業することも可能というわけだ。
武田塾で講師を務めている現役京都大学生の高田史拓さんは、高校1年生の時、センター試験の数学が17点だった。塾の指導で勉強し、京大2次試験の数学が90%取れるまでに成績が伸びた。その秘訣は「薄い参考書を1冊完璧にすること」だという。
高校レベルがわからなければ中学までさかのぼる。
「回り道のようでも、結局それが一番身につく方法。レベルにもよるが、中学校までなら意外と数カ月で終わる」(林塾長)
駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長はいう。
「理工学部で数学を課さない大学もあるが、入学してから苦労することは目に見えている」
数学に苦手意識を持っている人は、一度つまずいて遠ざけているケースも多いという。
「理系学部を目指すならば、少なくとも数IIBまではがんばってほしい。それでも思うように点数が取れない時に、数学を課さない学部を安全校や併願校として組み入れればいい。初めから数学を捨てると、選択肢を狭めることになります」(ライター・柿崎明子)
※AERA 2017年11月27日号より抜粋