地域に根差すだけが、生き残りの道ではない。地上波やCS、ネット配信など作品数は増えるものの、制作費や賃金の低下に悩む映像業界に切り込み、国際的に活躍するクリエーター育成を目指す大学もある。
「ようい、スタート!」
カチンコが鳴る。畳敷きの室内に座る役者たち、4Kカメラに照明。プロ顔負けのセットと機材で撮影しているのは、城西国際大学メディア学部映像芸術コースの学生たちだ。
「ほら、もっと感じ出せ」
教授からポンポン言葉が飛び、業界風だ。コースの八つの専攻には、映画や映像制作の現場で活躍するプロが教授として名を連ねる。ビジネスコミュニケーション専攻担当で副学部長の掛尾良夫招聘教授は、大学で映像芸術を学ぶ意義をこう語る。
「単なるオペレーターになるのではなく、作品を理解し、照明でも脚本でも音声でも、プロとしての主張を出せる人材になってほしいと考えています」
そうでなければ生き残れない現状を、業界に身を置く者として知っているからだ。
「日本の映画市場は規模ではもはや中国にも韓国にもかなわない。けれども、クリエーターとして経験を積めば、インディペンデント系の作品を撮って映画祭で勝負することもできるのです」(掛尾教授)
韓国・東西大学との共同制作作品「コッチばあちゃん」は今年、アジア大学生映画祭で審査員特別賞を受賞した。監督・脚本を務めた同学部4年の中川冬馬さん(22)は言う。
「同じ映像を志す学生だったからか、言葉の壁をスムーズに乗り越えられたのが印象的でした。自身が寝坊して遅刻した時、教授は『監督はみんなを引っ張っていく立場だ。映像に関係ないところで信頼をなくしてどうする』と厳しく叱ってくれた。これからも忘れないと思います」
貴重な学びを得られる、キラリと光る大学をどう選べばいいのか。『消えゆく「限界大学」』(白水社)の著者で、教育研究者の小川洋さんは言う。
「キャンパス内に学生たちの居場所が潤沢にあるか、学生がどれだけ使っているかは、その大学が学生にとって魅力的かどうかの指標になると思います」
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2017年11月27日号より抜粋