「国家権力に抵抗した人たちの資料は、後世の記録から抹消されるのが常です。当時の運動の息吹が、『史実』として国立施設に展示されるのは画期的で、私自身も感無量です」

 長期間継続している、身体を張った市民の抵抗運動は今や、沖縄の「辺野古」での米軍新基地建設反対の座り込みぐらいではないか。だが、こうした「反対派」はインターネットなどでバッシングの対象になるご時世である。石毛さんは言う。

「私たちは社会全体の熱にうかされて突き進んだところがあります。今のように一人ひとりが孤立している状況の中で、頑張れというのはね……やっぱり酷なものがあるかなと思います」

 一方でこうも言う。

「(三里塚闘争の)反対同盟委員長だった戸村一作さんが、いつも口癖のように言っていたのは、『怒らないやつは馬鹿だ』と。これは今の時代にも通じるんじゃないですかね。やっぱり理不尽なことに対しては精一杯頑張るということになんないと、世の中よくなっていかないんじゃないですか」

 前出の荒川教授は、こんな思いを今回の企画展示に託す。

「60年代後半は、日本の社会運動が『個』の主体性を重視する転換期でもありました。この時期の全国のさまざまな社会運動に通底するのは、社会問題を個として受け止め、発信したこと。この時代に噴出した『問い』はいまなお『現役』としての意味を持ち続けています。一人ひとりが当事者として社会にかかわろうとする姿をもう一回、思い起こしてもらえれば」

 自己保身にはしる政治家が跋扈(ばっこ)する「政治の季節」にならないよう、市民社会のチェック機能は今こそ問われている。企画展示は12月10日まで。(編集部・渡辺豪)

AERA 2017年11月20日号

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