恩田:演奏を終えて「今日はよくできた」と思う日もありますか。
ブ:ピアノも調律も音響も、その他の条件も全て整っている環境で、満員のお客様が期待に満ちて待っている中、私も完璧に深い演奏ができたなら、ある種の満足感は得られるでしょう。しかし、たとえそうであっても、翌日はまた別の演奏になります。結局のところ、究極の理想に近づいていく過程こそが美しいのであって、生きている間はその理想にはたどり着けないのではないでしょうか。
恩田:またどうぞ素晴らしい演奏をお聴かせください。ありがとうございました。
(構成/ライター・千葉望)
※AERA 2017年11月13日号