ニューヨークのハロウィーンパレードで、鎖に繋がれたトランプ大統領の仮装がうけていた。リベラルな人たちは、トランプ氏の有罪を願ってやまない(写真:Morgan Freeman)
ニューヨークのハロウィーンパレードで、鎖に繋がれたトランプ大統領の仮装がうけていた。リベラルな人たちは、トランプ氏の有罪を願ってやまない(写真:Morgan Freeman)
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 11月5日から始まったトランプ米大統領のアジア歴訪。北朝鮮の危機が高まる中で、 米国内の問題の「火消し」に躍起。穏やかな首脳外交にはなりそうにない。 ジャーナリスト・津山恵子氏がレポートする。

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「火事があちこちで起きているさなか、トランプ大統領はアジアを歴訪します」

 と、米CBSニュースのアンカー。トランプ氏は、過去にあった新大統領の華々しい「初の歴訪」というより、混沌(こんとん)としたワシントンの惨状を火消しし、「言い訳外交」をするという異様な立場にある。

 米政治、そして市民生活にまで混乱を及ぼしているトランプ大統領の失脚を願う人々にとって「歴史的な日」(オンラインメディア・アクシオス)は、アジア歴訪のわずか1週間前、10月30日に訪れた。2016年の米大統領選中、トランプ候補(当時)陣営が、ロシア政府と共謀し、有権者に影響を与える情報を流したとされる「ロシア疑惑」。捜査を担当するロバート・マラー特別検察官が、これまで「捜査中」として一切公開してこなかった捜査の端緒を初めて公にしたからだ。

「マラーがどれだけ本気で捜査しているかを示すものだ」(アクシオス)と、反トランプ派やメディアは、マラー氏の司法省訴状の公開以来、色めき立つ。

 内容は、トランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告が16年春から、ヒラリー・クリントン民主党候補(当時)に不利な情報をめぐって、ロシア政府関係者と会談していたというもの。これまで疑惑「報道」は数多くあったが、選挙戦中、トランプ陣営とロシア当局との接触に関わった人物が、報道ではなく、当局の捜査によって初めて明らかになった。これが「歴史的」というわけだ。

 さらに、トランプ陣営の元選対本部長だったポール・マナフォート被告も、資金洗浄の共謀など罪状12件で起訴された。罪状は、大統領選とは直接関係ないが、今後の捜査の足がかりとなる「別件」での訴追とみられ、反トランプ派は勢いづく。
 トランプ氏はこれに対し、起訴の発表の1時間半後、30日午前10時25分にツイートした。

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