舞台の上でVRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)を付け、初対面の男性と並んで立った。さらに男女2人のダンサーがそれぞれ、自分と相手に向かい合って両手を取る。ダンサー2人は音楽に合わせて自分たちの周囲を踊り始めた。HMD越しに周囲を見渡すと、現実の世界と過去に同じ場所で撮影された映像が入り交じっていく。
HMD越しに見えるダンサーに促され、目の前の相手の手をつかもうとするが、映像がずれてうまくつかめない。音楽が終わり、HMDを外すと目の前にいる男性の両手に触れている。まるで、以前からの知り合いのような親しみを感じて、目が合うと思わず笑いだした――。
そんな不思議な体験型パフォーマンスが、11月4日からNTTインターコミュニケーション・センター(ICC、東京都新宿区)で初公開される。昨年6月にイスラエルのアートフェスティバルで初公開され話題を呼び、昨年9月にもオーストリアのアートフェスティバルで公演があったが、今回日本初上陸となった。人数制限はあるが、実際に冒頭のようなVR体験することも可能だ。
これは、神経科学者で起業家の藤井直敬さんが開発した、代替現実(SR)技術を活用したアートパフォーマンスだ。SR技術ではHMDを使って目の前の現実と過去の映像を切れ目なく見せることで、現実と虚構の世界の認知をあいまいに感じるようにさせる。この仕組みを活用して、パフォーマンス・グループのGRINDER-MANらとともにこの体験型パフォーマンス「Neighbor」を制作した。
初対面の男女2人でHMDをかぶって体験をする。冒頭のように、体験者2人が舞台に上がり、男女のダンサーがパフォーマンスをする。体験時間は約5分。初対面にもかかわらず、体験後にはまるで旧知の仲のように相手に対して親しみを感じるようになる。実際、記者と一緒に体験をしたくれた男性も初対面だが、体験後に「特異な体験をすることで、親しみを感じた」と話してくれた。