アメリカではトランプ大統領の就任後10日で、偏見や憎悪に基づく犯罪行為「ヘイトクライム」が860件も発生したと報告されている。前出のデータベースには、街宣活動などで政治家のヘイトスピーチを見たときに報告する窓口も設けられ、政治家のヘイト発言をSNSでシェアできる。ネットの双方向性を最大限に活用した仕組みだ。
衆議院解散後、
「この戦いは右か左かという古いイデオロギーの戦いではありません。上からの権力的な民主主義に対して、草の根からの国民の声に基づく民主主義をもう一度、立て直しましょう」
と街角で語りかける立憲民主党の枝野幸男代表に、人々が一斉にスマホを掲げる場面を多く見かけた。
写真と感想をフェイスブックでシェアするという大学非常勤講師の女性(60)とインスタグラムで動画を中継していた販売員の女性(26)はいずれも、リベラルの新しい受け皿としての同党への期待を語った。会社員の男性(23)は、同党が「公式ツイッターのフォロワーを購入している」といううわさを検証して反論したことに共感し、初めて選挙の街頭演説に足を運んだという。
「今までリベラルってネットのデマもヘイトも受け流してたけど、戦えるんだなって見直しました。だってそのほうがずっとかっこいいですよ」(男性)
有権者にとっては、SNSの運営方針もそれぞれの党のマニフェスト。10月12日現在、立憲民主党のツイッターのフォロワーは約17万。自民党の12万、希望の党の1万に比べると、その注目度の高さは歴然だ。
タイムラインを流れる写真や動画、スピーチの書き起こしこそ、枝野代表の言う「草の根の民主主義」だろう。
ツイッターのツイート数と各政党の獲得議席数の関連などを調査してきた東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授の、
「SNSでは自分と同じ意見の人ばかりフォローしがちなので、タイムラインを見て自分の意見がマジョリティーだと思い込まないよう注意が必要です」
という言葉を胸に刻みつつ、一票を投じるべき候補者や政党を見極めたい。(編集部・竹下郁子)
※AERA 2017年10月23日号より抜粋