「ほんの何学年か違うだけで人生が変わる。政権交代で社会が不安定になったら、経済状況が悪くなるのかも」と恐れる。
厚生労働省の「就職状況調査(2016年度)」によると、民主党政権時の10年10月時点で57.6%だった大卒内定率は16年10月に71.2%。最終的な就職内定率は97.6%で調査開始以来最高だった。
都内の高校で選挙啓発イベントなどを行う嘉悦大学経営経済学部教授の和泉徹彦さんは「今の売り手市場がアベノミクスのおかげと考えている学生が多い。加えて、教育の無償化など若い人に届きやすい政策が語られているので、現政権でいいと考えるのでしょう」と分析する。
若者たちは想像以上に、政治への当事者意識が強いようだ。では、彼らの投票行動に最も影響を与えているのは誰か。話を聞いた若者の多くが、「お母さんが安倍さんじゃダメだって」「立憲民主党の政策とか母からLINEで来る」と、「母親」を挙げた。
一方、東北大学法学部で学ぶ女子学生(18)は昨年の参院選前、「どうせ行っても同じ」と漏らす母親(51)に「国民の義務だよ」と投票を促したという。
「国会を軽視するような態度や強行採決する政治を、仕方ないとあきらめたら終わり」
そう。政治家より彼らの人生のほうが長いのだ。
『中高生からの選挙入門』を著した谷隆一さんは、昨年の参院選の際に女子学生から「(任期は6年だから)6年後の自分のために仕事をしてくれる人を選ぶから慎重になる」と言われたという。長いスパンで未来を考えている若者たちは、悩みつつ義務を果たそうともがいている。(ライター・島沢優子)
※AERA 2017年10月23日号