
「ツイン・ピークス The Return」(全18話)WOWOWプライム毎週土曜夜9:00(二カ国語版)、毎週金曜夜11:00(字幕版)/「まだ間に合う!第1章~第8章一挙放送」WOWOWプライム9月22日(金)夜11:20~9月23日(土)午前8:00/“TWIN PEAKS”:(c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.






全世界で社会現象を巻き起こした伝説のドラマシリーズ「ツイン・ピークス」の続編がWOWOWで放送中だ。物語の25年後を描く謎に包まれた本作、企画・製作総指揮、監督はデヴィッド・リンチ。あの世界をもう一度体験できる──。
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海外ドラマに興味がない人でも、このタイトルには聞き覚えがあるだろう。「ツイン・ピークス」。約25年前、世界中を熱狂させた全30話の米連続ドラマとその劇場版だ。
「カルトの帝王」といわれる映画監督のデヴィッド・リンチが作り出した独特の世界観とキャラクターたちは、長く伝説となっていた。
その「ツイン・ピークス」が、2017年の今年、旧作の25年後を描いた全18話の連ドラとしてよみがえり、現在放送中だ。
「何かでバズらせたりするような特殊な宣伝はしていませんが、ほかの作品とは桁違いに加入してくださる方が増えました。それだけ、もともとのコンテンツの魅力が高かったんだと思います」
そう語るのは、日本で独占放送をしているWOWOWで、日本語版の制作を担当している加茂義隆だ。旧作も、当時開局したばかりだった同局の起爆剤になったというが、今作に対する問い合わせ数はかつて体験したことがないほど多かったという。
では、「ツイン・ピークス」のなにが人をそこまで熱狂させるのか。
●謎が謎を呼ぶ展開
物語の導入部はこうだ。
架空のアメリカの田舎町ツイン・ピークスで、町一番の美少女ローラ・パーマー(シェリル・リー)の遺体が発見された。捜査に訪れたFBIの捜査官デイル・クーパー(カイル・マクラクラン)は、一見平和そうな町に不倫、麻薬、売春といった負の側面が潜んでいることと、人々が裏の顔を持っていることに気づいた──。
と、最初は普通のミステリーだが、事件を追ううちに常識では説明できないオカルティックな出来事が次々に起こる。
そもそも今作は、旧作の最終話で非現実的な空間“赤い部屋”に閉じ込められたクーパーが「25年後に会いましょう」と言われた言葉通りに復活しているのだが、その言った相手は“冒頭で殺されていた”ローラ・パーマー。それだけでも混乱必至だ。
しかも今作はその“赤い部屋”から物語がはじまり、ニューヨークのとある部屋に設置されたガラスの箱を見張っていた青年が謎の物体に殺された事件や、サウスダコタ州での頭と胴体が別々の人物である切断された遺体の発見など、不気味な事件に続いていくのだ。もちろん、旧作でおなじみの人々の25年後の動向もわかるようになっているからファンにはたまらない。
「どうとでもとれる描写やダミーの伏線があったり、わかりやすいとはとうてい言えない物語ですが、のりしろが多いからこそ、どう解釈したか人としゃべりたくなります。答えがない分、いろいろな楽しみ方ができるところが魅力なのではないでしょうか。世代の違う方とのコミュニケーションツールにもなります」(加茂)
日本語版を制作している現場でもさまざまな解釈が交錯して、その都度本国に確認をしているという。
吹き替えキャストも可能な限り旧作と同じなのだが、いまや大御所となった彼らも「俺の役はいったいどうなってるんだ?」と迷いながらも、楽しんでいるとか。
再びクーパーを演じることを長年期待していたというマクラクラン自身、
「デヴィッドが描く世界はとても独特。奇妙で理解が難しい描写が物語に散らばっている」
と認めつつ、
「オープンな気持ちで見てほしい」
「人生観が変わるかもしれない」
と語っている。
●18時間の映画のよう
さらに、今作は全話分の完成された脚本を元に撮影を行って、それを編集で18話に構成するという手法で作られているので、まさに「18時間の映画」。リンチが映画で見せる芸術性が思う存分発揮されたテレビドラマだといっていい。
「アート系の作品を見ると偏差値が上がった気がして(笑)。頭の体操になると思います。完璧に料理しない、最後の味付けはお客さんがしてくださいという問いかけてくる感じが、『ツイン・ピークス』らしさであり、リンチ作品の魅力です」(加茂)
旧作では、日本でもローラの追悼集会が開かれたり、劇中設定とキャラクターがそのまま缶コーヒーのCMに起用されたりと、大きなムーブメントが起きた。今作でも、SNSに様々な読み解きがアップされており、ファンの交流は活発だ。
ほかに類のないオンリーワンなコンテンツ「ツイン・ピークス」。この先ますますテンションの上がる物語が展開していくので、一度体験してみてほしい。緊張感に目が離せなくなること、うけあいだ。(ライター・早川あゆみ)
※AERA 2017年9月25日号