モローの絵画。「当時、テレビ局に頼んで1千万円を前借りして購入資金の足しにしました」(石坂さん) (写真:本人提供)
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モローの絵画。「当時、テレビ局に頼んで1千万円を前借りして購入資金の足しにしました」(石坂さん) (写真:本人提供)
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石坂浩二(いしざか・こうじ)/1941年生まれ。BSジャパン「極上!お宝サロン」で司会を務める。初の自伝『翔ぶ夢、生きる力』(廣済堂出版)が発売中(撮影/鈴木芳果)
石坂浩二(いしざか・こうじ)/1941年生まれ。BSジャパン「極上!お宝サロン」で司会を務める。初の自伝『翔ぶ夢、生きる力』(廣済堂出版)が発売中(撮影/鈴木芳果)

「断捨離」と言われても、なかなかモノが捨てられない。だが、インターネットのおかげで、実家の片づけや引っ越しで出るガラクタにも値がつく時代に。訪日する中国人が、家の片隅に置かれた中国骨董に高値をつけ、メルカリでどんどん遺品整理もできる。タンスの中は、宝の山だ。AERA 2017年9月25日号では「お宝流出時代」を大特集。

 モノでも、体験でも人生の逸品を見つけられた人は幸せだ。その喜びは世界でひとつの物語。俳優の石坂浩二さんのお宝を見せてもらった。

*  *  *

 1994年から22年間、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の司会でした。お宝とは“モノとの関わり”という面もあるので、その価値は価格に比例するとは限らないと思います。お宝と一番縁遠いのは、「買ったばかり」のもの。お宝の価値には、手に入れる際の苦労や、所有してからのエピソードなども含まれると思うからです。

「鑑定団」がヒットした理由の一つはタイミング。バブル経済がはじけた後だったので、偽物が山と出ました。3億円の価値があると思っていたお宝を鑑定すると、30万円だったと知り落胆する所有者の姿にお茶の間が沸きました。

 現在、司会を務める「極上!お宝サロン」で以前、「瓶」を収集されている方に登場いただきました。大正以前の目薬の瓶を全種類そろえる際、入手困難なものが出てきますよね。お宝ってまずは探すところから始めるのではないかと。その方のお宅の写真やお話を見聞きすると、本当に宝物なんだなと感じます。

 そういうコレクターの方は仲間やライバルに会って話をすることがたまらない喜びだそうです。ひとりで黙々と収集するだけではなく、自分が宝物だと思うものを、誰かと共有したり、競ったりする経験も大切ですね。

●東京と倉敷を往復

 私の宝物の一つは、ギュスターヴ・モローのサロメ系の作品です。20代の頃、暇があったらモローの作品が展示されている倉敷の美術館に足を運びました。当時その美術館は靴を脱いで上がることになっており、あまりに何回も行ったため、見終わると「靴磨いておきました」と言われ「もっときれいな靴を履いてくればよかった」と思ったことも(笑)。29歳の時に縁あってモローの絵を購入。今でも自宅に飾っています。

 金額での値付けは簡単ですが、何に対しても興味がない人は、一生お宝は持てません。インターネットなどで多くのものが手に入りやすくなると、モノ集め自体がつまらなくなってくるかもしれないですね。自分で作った、他の人に作れないものこそ価値が出てくるかもしれません。(構成/編集部・小野ヒデコ)

AERA 2017年9月25日号