【旭酒造株式会社 桜井博志会長】1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。73年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、先代である父と対立して退社。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建を果たす。2016年から現職。四季醸造の実現や遠心分離機の導入など改革を進め、21年にEYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン受賞と日本代表に選出されるなど、経営者としても国際的に評価されている。(写真・高橋奈緒)
【旭酒造株式会社 桜井博志会長】1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。73年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、先代である父と対立して退社。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建を果たす。2016年から現職。四季醸造の実現や遠心分離機の導入など改革を進め、21年にEYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン受賞と日本代表に選出されるなど、経営者としても国際的に評価されている。(写真・高橋奈緒)
この記事の写真をすべて見る

 日本酒「獺祭」の蔵元である旭酒造が、アメリカのニューヨークで酒造りを始めている。会長である桜井博志さんは常に好奇心に満ち、豊かな発想を持ち続けている。なぜ、若々しくいられるのか。東北大学の瀧 靖之教授の言葉から、「脳を若返らせるために必要なこと」を解き明かした。

【写真】「獺祭」の蔵元が、米国に設けた酒蔵はこちら

*  *  *

「今年73歳ですが、気持ちは40代の時のままです」

 旭酒造の会長・桜井博志さんは、にこやかにそう話す。その立ち姿や張りのある声からしても、とても73歳には見えない。おしゃれで清潔感があるのだ。

 なによりも、発想が豊かで柔軟。その笑顔に、40代というよりもっと若い世代と話している気持ちにもなる。何か、秘密があるのだろうか。

■年齢を感じさせない中高年が増えている理由

 年を重ねても若々しい秘訣と、どうすれば桜井会長のようにハツラツとして生きられるのかを東北大学・加齢医学研究所・教授の瀧 靖之先生に聞いた。

「まず、桜井さんのこれまでのお仕事や、ニューヨークへ移住されることをお聞きして、とても素晴らしいと思いました」

 と称賛した。桜井さんに限らず、年齢を感じさせない中高年が増えていると、瀧先生も感じている。その要因を聞くと、

「一番は情報だと思っています。昔は本や新聞、雑誌はありましたが、今のようにネット、YouTubeなどの動画やSNSはありませんでした。それらのメディアでは、元気な高齢者の方がどうすれば健康でいられるかという情報を発信しています。手軽に得られるそれらの多くの情報を受けて、行動する人が増えたからだと思います」(瀧先生)

 もう自分は年だからとか、自分にはできないからと思わず、自分でも“やればできる”という可能性を感じ、行動する人が広がっているのだと瀧先生は話す。

「何歳になっても脳は可塑性、簡単に言うと変わり続ける力があります。つまり、進化し続けていくんです。たとえば楽器の演奏の場合、3歳から5歳ぐらいの時にピアノを始めると、すごく伸びるんですよ。では10歳、あるいは30歳から始めたら遅いのか、 70歳からならもう無理なのかというと、そんなことはまったくありません。脳科学的には何歳からでも成長することが証明されています」(同)

次のページ
年を取っても能力は獲得できる