だが、子育て政策や待機児童問題に関する立法を担う国会議員に妊娠や出産、育児を認めない社会が健全だと言えるのか。7月にも、無所属の鈴木貴子衆議院議員(31)が、切迫早産と診断されて安静を余儀なくされたことをブログで報告したところ、「任期中の妊娠はいかがなものか」「辞職すべきだ」などの声が届いた。金子さんは言う。
「議員にはいろんな立場の人がいるべきで、出産、子育てをしながら働くことの大変さを肌で知る政治家も必要です。代理人制度やテレワークの導入はできないか。国会議員の働き方にも議論の余地はあるはずです」
そもそも、国会議員や「特別職国家公務員」にあたる公設秘書などは原則として労働基準法の適用外で、産休や育休の制度がない。妊娠や出産で国会を休んでも歳費や手当が満額支給されることが、逆に批判の的となっている。議員秘書歴20年以上で『国会女子の忖度(そんたく)日記』(徳間書店)の著書がある神澤志万(かみざわしま)さんも、こう話す。
「出産後に復帰した公設秘書はほとんどいません」
数少ない子育て中の秘書は、国会が遅くなるときは子どもを保育園から議員会館の事務所に連れてくる。共謀罪法案の審議中は、夜10時くらいまで子どもたちが走り回っていた。神澤さん自身、議員会館内を子どもを抱っこして歩いていてベテラン男性議員に「けしからん」と怒られたり、元保育士だった女性議員に「出ていけ」と言われたりしたこともあるという。
●大量着信の夢を見る
国会議員は24時間365日国民のために働き、公設秘書も同様に働く。その結果、議員の原稿草案を作成する各省庁の官僚や公務員、それを報じるマスコミなどが長時間労働を強いられる。こうした人々の受け皿になっているのが夜間保育園だ。
テレビカメラマンの女性(37)は、今年4月から1歳半の長男を福岡市内の第2どろんこ夜間保育園に預けている。飲食店経営の夫の帰りは深夜で、毎日の迎えは女性がするしかない。
出産前は早朝7時から深夜2時までという「ありえない働き方」をしていたが、出産後は夜の仕事をセーブ。それでも通常の認可保育園の時間内に迎えに行けず、夜10時までの夜間保育園に行きついた。毎日の迎えは9時半くらい。長男はいつも、起きて帰りを待っている。