仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号では、そんな「仕事と子育て」を大特集。「職育接近」が最後の切り札になりそうだ。
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自民党の金子恵美衆議院議員(39)の一日は、午前6時に始まる。1歳半の長男がムズムズと起きだすと、眠い目をこすりながら朝食の準備。ほぼ大人と同じものが食べられるようになって、食事の支度は少し楽になった。それでも、自身の身支度をしながら子どもにご飯を食べさせ、着替えさせて保育園の登園準備をする朝の時間帯は、目が回りそうな慌ただしさだ。
東京・赤坂の議員宿舎を出るのは午前8時30分過ぎ。約1キロ離れた議員会館内にある認証保育所まで約20分、ベビーカーを押して坂道を上る。
「夜は地元の新潟県での会合も多い。だから私は主に送りを担当し、迎えは夫。夫婦でどうにもならないときは実家の母を頼っています。私4、夫3、母3の割合で育児を分担し、何とか回しています」(金子さん)
●国会議員ばかりズルい
今年6月、週刊新潮が、当時総務政務官だった金子さんが議員会館内の保育所への息子の送迎に公用車を使っているのは公用車の私的利用にあたる、と批判したことは記憶に新しい。
批判、擁護から同情までさまざまな声が上がったが、都市部を中心に多かったのは「私たちは雨の中、傘を差しながら必死でベビーカーを押しているのに、国会議員が公用車で登園なんてズルい」という声だ。金子さんは、公用車での送迎はその前後に公務があるときのみだったと説明しつつ、謝罪した。
「以前から徒歩でも送り迎えしていたし、『謝るべきではない』というご意見もいただきました。ただ、批判は真摯に受け止めて公用車を使うのをやめ、政治家はもちろん、誰もが堂々と子育てしながら仕事ができる環境づくりをしなければならないと思ったんです」(同)
金子さんへの批判は、仕事と子育ての両立がまだ多くの当事者にとって決して楽なことではないという現実の裏返しだ。待機児童問題を筆頭にいつまでも状況が変わらないから、政府が「女性活躍」や「子育て支援」を声高に叫び、多くの企業が産休や育休、復帰後の時短勤務などの制度を整えても、私たちは国会議員が出産や子育てで仕事を休むことに寛容になれない。