対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」を使えば読書感想文などが瞬時に作成できることから、学習への影響を懸念する声が報じられている。ところが、「それは本当かな、と思います」と、全国学校図書館協議会の設楽敬一理事長は疑問視する。同協会が主催する青少年読書感想文全国コンクールには毎年、約300万人の子どもたちが応募する。設楽理事長はむやみに危機感を訴えるのではなく、むしろチャットGPTと共存することで子どもたちに考えながら読む力を身につけさせることができるのではないかという。
【ChatGPTに聞きました! 「将来なくなる仕事」一覧はこちら】
* * *
「確かにチャットGPTを使えば簡単に読書感想文ができるのですが、それを担任の先生が読めばすぐに、変だな、と気がつくと思うはずです」
設楽理事長はそう指摘し、危機感をあおるマスコミに疑問を投げかける。
「でき上がった文章がAI作成のものかの判別も難しく、作文指導が成り立たなくなる、という報道は、記者が実際にチャットGPTを体験して書いたものなのでしょうか」
設楽理事長らは昨年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書を対象にチャットGPTで読書感想文を生成し、検証作業を行った。
「コンクールの審査を担当する先生にも読んでもらったのですが、内容の真偽は別として『文章が平坦だねえ』と言っていました。文を書いた人の個性が感じられないし、本を読んだ感動も表れていない。よく書けた読書感想文を読むと、その子に会ってみたいな、と思うのですが、そういう感情が湧き上がってこない。仮にチャットGPTに書かせた読書感想文が応募されたとしても、『この文章は推さないよね』と。多分、校内審査の段階で上位の候補にならないと思います」
チャットGPTで作文指導
筆者も試しに、小学生から高校生向けの課題図書4冊を選び、チャットGPTに読書感想文を書かせてみた。
すると、文章が平坦である以上に強い違和感を覚えた。「この人は本当に本を読んだのだろか」という疑問を抱いた(もちろん、チャットGPTは本を読んでいない)。
例えば、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)の感想文には、こう書かれている。
<本書には美味しそうなレシピがたくさん掲載されています。余剰のパンを利用した独創的な料理が紹介されており、(中略)特に、余剰のパンで作るフレンチトーストのレシピは、とても簡単で、家庭で試すことができるので、ぜひ挑戦してみたいです>