



ホームレスの青年が1匹の猫に支えられ、ベストセラー作家に。世界中の共感を呼んでいるコンビが英国から来日した。
「おかげさまでボブは元気だよ。まだ日本に着いたばかりで、僕と同じく時差ぼけ気味だけど」
約12時間のフライトを終えてロンドンから到着したジェームズ・ボーエン(38)と猫のボブ(推定11)。取材中、ボブはジェームズのそばで丸くなり、リラックスした様子だ。撮影のときには「了解」とばかりに起き上がり、得意の「ハイタッチ」を決めてくれる。
「ボブはいままでも僕と一緒にドイツ、アムステルダム、オスロなどあちこちを旅しているんだ。今回はいままでで一番長い旅だったけど、とても注意深く、綿密な計画を立ててきたよ」
●ボブとの出会いは運命
1週間の滞在中、雑誌やテレビの取材がひっきりなしだ。なぜ、彼らはここまで注目されるようになったのか。
遡ること10年前。ロンドンで路上演奏(バスキング)をしていたジェームズは、ケガをしてやせ細った茶トラの猫と出会った。だが当時ジェームズは薬物依存のホームレス。なんとか生活を立て直そうと依存克服の治療を受け、行政の支援でアパート住まいを始めたばかりだった。
「猫の世話なんてできない。自分の面倒を見るので精一杯だ」
しかし逡巡の末、ジェームズは猫を家に入れることに。子ども時代から猫に囲まれて暮らしてきた彼は、もともと“猫スキル”が高かった。牛乳はそのままでは猫によくないと水を混ぜて与え、全身をチェックした結果、彼は猫を病院に連れていく。全財産をはたいて猫のために薬をもらったそのときから、彼らの人生は重なった。
「ボブは助けを必要としていて、僕もボブが必要だった。運命に引き寄せられたんだろうね」
ボブと名付けられた猫は順調に回復し、やがてジェームズの肩に乗って路上演奏についてくるようになる。ボブは人を怖がらず、乗り物や街中の騒音にも動じなかった。