
荒川 昭和的な家族を再生することができると本気で考えている人たちが、政治家の中には一定数いるんですよ。確かに、その統一的な家族のカタチが安心を提供してくれた時代もありました。しかし、かつて標準世帯といわれた夫婦と子世帯の割合がもはや2割台まで減っています。昭和型の家族だけが選択肢ではなくなっています。
石山 みんなそれぞれの理想の家族というものがあって、それを選択することで、批判されたり、不利益を被ることのない社会であるべきです。
荒川 アンジュさんは拡張家族といって、新しい家族のあり方を提唱されていますね。
石山 はい。シェアハウス「Cift(シフト)」の取り組みですね。17年からやっています。シフトは血縁や制度によらず相手を家族だと思ってみようという意識を持ちながら一緒に生活をしてみるコミュニティです。
100人いれば、100通りの家族観があります。私たちはそれぞれが育った環境や家族観を持ち寄りながら、「家族とはなんだろう」という問いを日頃から分かちあい、対話をし、それぞれが安心して豊かだと思える新しい暮らし方や家族のあり方を模索しながら暮らしています。
荒川 どんな人が集まっているんですか。
石山 料理研究家、ミュージシャン、LGBT活動家、僧侶など色んな人が集まっていますね。0歳から65歳くらいまでいて、渋谷と京都に拠点があり、全員で110人ほどいます。渋谷には0歳、3歳の子どもが二人、小学生の子どももいます。シェアハウスに日常的に住んでいる人もいれば、普段は別のところに住んでいるけれど、もう一つの家として、あるいは時々くる第三の居場所として、このコミュニティに所属している家族たちがいます。
初期はアーティスト的な人が多かったんですが、コロナで問い合わせが増えて、会社勤めの人も増えました。
荒川 その人たちが持っている家も共有しているんですよね?
石山 そうですね。グーグルマップでお互いの家がどこにあるか共有していて、そこの地域にいくときは泊まらせてもらったりしています。全国に家があるイメージですね。