18歳人口の減少で、昼間の大学に入りやすくなったことも夜間部の縮小に拍車をかけている。国立の滋賀大学(滋賀県彦根市)経済学部は、今年度の夜間の入学者からフレックス制を導入した。学費は一部半額(入学金が14万1千円、授業料が26万7900円)と魅力だが、

「志願者数は横ばいだ。第1希望で志願する学生が少なく、定着率が悪い。昼間部で学びたい学生が多く、フレックス制に切り替えた」(入試課の担当者)

 昨年度は46人が入試に合格したが、実際に入学したのは17人だったという。
就活に強い夜間

 ただ、大学夜間部を取り巻く環境が変わるなか、夜間部の魅力は薄れていない。その最たるものが学費の安さだ。国公立の夜間部は昼間部の半額と設定している大学が多く、私立も昼間部より安く設定されている(下の表参照)。東京電機大の場合は昼間部の約半分だが、夜間部の魅力は安さだけではない。同大電気電子工学科4年の九澤渉さん(23)は、こう話す。

「クラスには大手企業で働く社会人もいる。働く現場の話を生で聞けることも魅力です。昼間は時給のいいバイトが見つかりにくいというデメリットもありますが、教授も授業内容も昼間と同じ。4年で卒業もできる」

 保育士、幼稚園教諭の採用数で国内トップを走る聖徳大学(千葉県松戸市)は、短大部、系列の専門学校にも夜間部を持ち、保育士資格と幼稚園教諭免許を卒業と同時に取得できる。

 大学の児童学部の夜間主コースでは、卒業に必要な単位の半分を夜間に履修すれば、残りの単位は昼間に取得することも可能だ。同大児童心理コース4年の菅野純花さん(22)は夜間主コースの魅力を、こう話した。

「夜は働きながら勉強しに来ている人が大半なので、何となく授業を聞いている人はいない。学生数も少ないから、先生との距離も近い。社会人の方から、現場の話も聞ける」

 今回の取材で記者は夜間部に通う6人の学生に話を聞いたが、夜間部の魅力に全員が「学生の向学心の強さ」を挙げた。

 冒頭の野中さんは14年、新たな入試制度の1期生として東洋大国際学部国際地域学科のイブニングコースに入学した。現在は4年生で就活を終え、ホテル業界など10社を受け、そのうち7社から内定を受けた。

「就活中、夜間部の学生であることは、自分から積極的に話しました。昼間に働いてきた経験は、面接でも受けが良かった。夜間だからと差別されることはなく、むしろプラスになっている印象を受けました」

 そして、こう続けた。

「夜間部の存在を知らなければ学びを断念していた。今、かつての自分と同じ境遇にある高校生には、諦めず、こうした場があることを知ってほしい」

 ある夜間大学の関係者は「夜間部は大学の負担が大きく、もうからない」と本音を漏らすが、野中さんのような学生を救っているのも事実だ。奨学金の返還が社会問題化するなか、大学夜間部の明かりに希望が見えてくる。

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2017年8月28日号

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