14年度からは冒頭の野中さんが受験した新たな入試制度「『独立自活』支援推薦入試」を導入。大学事務局で日中働きながら、夜間に学ぶことを前提とした入試制度だ。働く場を保障することで、地方からの学生が挑戦しやすい環境を整えた。
「夜間部が休廃止されていくなか、高校の先生や親から夜間部という選択肢が消えていた。経済的な問題で進学を断念する学生に夜間部という選択肢を提示したかった」(同前)
夜間部の学生数は04年に10万人を割って以降、16年は2万460人と減少の一途をたどる。夜間部を廃止し、昼夜開講のフレックス制を導入する大学も増えた。それでも、夜間部やフレックス制を設置する大学は05年の最大114校から、16年には71校に。一部、東洋大のように志願者が急増する夜間部はあるが、全体的には縮小傾向だ。背景には働く環境の変化もある。
●夜間は昼間の滑り止め
電大の愛称で知られる東京電機大学(東京都足立区)工学部第二部は、18年度入試から新たに「はたらく学生入試」を新設する。昼間、大学で働くことで給与を得て、働きながら学べる入試制度だ。前述の東洋大の「『独立自活』支援推薦入試」と同様の制度だが、背景は異なる。吉田俊哉教授は「働きながら学べるという選択肢を与えているつもりが、実は与えられていない」と指摘し、こう話す。
「昔のように17時に仕事が終わって、夜間大学にというわけにはいかない。長時間労働が問題になるなか、昼間の働き先を学校が準備することで、これまで応援できなかった人を応援できると考えた」
社会人向けの「実践知重点課程」も新設し、企業人が求める特定の科目のみの受講も可能とした。卒業証書は得られないが、入学試験もない。工学部第二部長の佐藤太一教授は言う。
「技術競争が厳しいなか、企業には人材を育てたい気持ちが強いが、社員を夜間の大学で4年間学ばせる余裕のある企業は少ない。例えば1年でも技術研修をしたいという企業には、特定の科目だけを選んで履修する制度を勧めたい」