「あれは変だよね」「普通じゃないよね」とだれかが口にし、周囲がどっと笑うシーンをよく見かけます。その輪に入っていると居心地が良いでしょうが、外から見るとそうではありません。普通って一体なんなのでしょうか? みんなが共有している規範を身につけつつ、「普通」とされることをそのまま受け止めず、斜め45度くらいから眺める。これが現代の日本人には必要だと思います。
ただし、相手の「普通」と自分の「普通」がぶつかり合っても、どうにもならない。私の提案ですが、「迎え読み」はどうでしょう? 相手の立場でその「普通」がどう生じたのか、掘り下げて考えていくのです。
人はそれぞれの世界観を持っています。それは海の波打ち際のようなもの。砂を蹴散らかして相手の領域に無理やり侵入するのではなく、波打ち際を崩さないように桟橋を一本かけたり、潮が引くのを待てば、違う世界との融合が成り立ちます。
大きい波が来るかもしれません。それに応えたり、避けたりする弾力性のある強さを身につける。「空気を読む」日本人の中で、それが自分を救ってくれるのではないでしょうか。(構成・ライター/羽根田真智)
※AERA 2017年8月14-21日号