またも日本列島を集中豪雨が襲った。九州北部に積乱雲の集団「線状降水帯」が居座り、土砂崩れなどで多くの被害も出た。正体は一体何なのか?
7月5日午前、朝鮮半島から日本の中国地方に延びる梅雨前線がゆっくり南下、九州北部に近づいた。そこへ東シナ海で水分をたっぷり含んだ暖かい空気が天草灘から有明海を経て高度1キロまでの大気下層に吹き込んだ。その空気がぶつかる先は福岡・佐賀県境の筑紫山地。空気は山地に沿って上昇し、積乱雲に成長した。空気は上空に行けば、気圧が下がるため膨張し、温度も下がる。空気中の水蒸気は凝結して雲に、そして雨になる。積乱雲が夕立を起こす仕組みだが、今回はこれでは終わらなかった。発生から1週間余りで死者29人、20人以上が行方不明のままだ。何があったのか。
●積乱雲続く線状降水帯
ひとつの積乱雲の「寿命」は1時間ほどしかない。大粒の雨を降らせて、水分を消費し尽くせば、衰えて消えるためだ。ところが今回は、南西の風が暖かく湿った空気を切れ目なく供給し続けた。このため、すでにできた積乱雲の後ろ(風上)に新しい積乱雲のタネを次々と作って成長を続け、一直線に並んだ積乱雲の連なり、いわゆる「線状降水帯」となったのだ。
福岡管区気象台が発表した5日13時から6日零時までの気象レーダー画像はこの様子をはっきり捉えている。福岡県朝倉市から大分県日田市に並び始めたこの雲が最も大量の雨をもたらしたのは15時から16時。朝倉市から大分の臼杵湾まで直線距離で長さ150キロ、高度1万5千メートルの線状降水帯となり、局地的な大雨を降らせたのだ。
9時間ほど続いた豪雨の威力はすさまじかった。気象庁アメダスの自動雨量計測のデータによると、朝倉市では5日13時の1時間当たりの雨量は88.5ミリとなり、1日降水量は516ミリ。日田市も1日で336ミリを記録。観測史上1位の豪雨が襲いかかり、各地で土砂崩れや流木被害を招く大惨事となった。