●14年広島豪雨も同一犯
実はこの線状降水帯が世間で知られたのは最近の話だ。土砂災害で74人の死者を出した2014年8月の広島豪雨。ここから注目され始めた。
集中豪雨のメカニズムを研究している気象庁気象研究所予報研究部の発表によると、広島に豪雨をもたらしたのは、幅20~30キロ、全長約100キロの線状降水帯。南の豊後水道から暖かく湿った空気が流入し、高さ500メートルの山に上昇した空気で積乱雲が発生、さらに同水道からの湿った空気が流入し続けて線状降水帯を形成。200ミリを超える大雨をもたらした。この流れ、今回の九州北部豪雨とそっくりである。
この現象、過去に珍しくないことも分かり始めている。同研究部のグループは、1995年から09年の4月から11月に起こった集中豪雨計261例(台風・熱帯低気圧による豪雨は除く)に関して、その雨量計測と気象レーダー観測のデータから調査し14年に発表した。それによると、雨の降る形が線状と確認されたのは全体の64.4%を占め、南日本(山口・九州・南西諸島)に限るとなんと9割が線状だったという。
気象庁で集中豪雨のメカニズムなどを調査研究する加藤輝之氏は「風向きがわずかに変わるだけで水蒸気の流入する位置が数十キロずれる。線状降水帯の発生位置を正確に予測するのは困難」などと発表。要は発生メカニズムの詳細はまだよく分かっていないのが現状で、加藤氏が毎年のように予報官の研修で発表してきた最新の研究成果でも、線状降水帯の発生条件については、毎回「改定」が加わっている。
では、気象レーダーなど最新機器による観測で線状降水帯の発生を予測できるのか。気象庁は、発生メカニズムの解析とともに、集中豪雨の程度のカギとなる大気下層の「水蒸気量分布」を捉えようと、雨の分布が見える気象ドップラーレーダー、レーザー光を利用した非降水時の観測装置などの技術開発を進め、その精度を上げようとしている。