そして最も強いインパクトを残したのが2017年に1位で入団した近藤弘樹だ。楽天では一軍で結果を残せずにわずか3年(17試合に登板、0勝4敗、防御率7.00)で自由契約となったものの、ヤクルトに移籍した2021年は中継ぎとして開幕から14試合連続無失点など快投を続け、22試合に登板して防御率0.96と見事な成績を残したのだ。その後は右肩の故障に苦しんで、今年からは育成契約となっているが、この活躍を見てもったいないと感じた楽天ファンも多かっただろう。またプロではないが、昨年オフに自由契約となった内田靖人(2013年ドラフト2位)も今年は社会人野球のエイジェックで主砲として活躍している。ここまで環境が変わって活躍している選手が多い球団も珍しい。

 そう考えると気になるのはやはりチームの育成力だ。ここまで上位指名から戦力となっている高校生は松井と安楽だけで、ともにその年のナンバーワンと言える選手である。その2人にしても先述した通り、安楽は期待された先発ではなく中継ぎとなっている。大学、社会人から入団した小深田、辰己、太田などは守備と走塁については即戦力と言われていた選手であり、プロで大きく成長したという印象は受けない。ここ数シーズンは他球団で実績のある選手をフリーエージェント(FA)などで獲得してきたという事情はあるものの、好素材が入団してきてもその才能を伸ばしきれていないという面は間違いなくありそうだ。

 ただ、そんな中でも救いとなる選手は存在している。7年目の藤平尚真は過去4年間でわずか1勝にとどまっていたが、今年はここまで3試合に先発して2勝1敗、防御率2.60という成績を残している。またルーキーの荘司も2試合に先発して未勝利、防御率4.22と際立った成績は残せていないが、奪三振率は10.97と素晴らしい数字をマークしている。彼らのようなスケールの大きい選手をいかにチームの主力にできるかが今後の大きなカギである。

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楽天の“育成力”は改善するのか