そこでQRコードを大きくし、包装の前面にくるようにリニューアル。仮にリンクを見に行かなくても「きちんと開示している」という印象を持ってもらえるようになりました。
コミュニケーションツールも、来てくれたお母さんたちに何を使っているのかと聞いて、全員が使っていたLINEに切り替えました。
ウェブサイトを通じて、マクドナルドへの疑問も募集した。集まったのは、「フライドポテトを揚げた後の油はどうしているの?」「パンが腐らないって本当?」「ミミズを使っているのでは?」など多種多様な約3700件。その後一つずつ、Q&Aサイトやツイッターなどを通じて回答した。
日本の上場企業で女性社長は1%未満。そこに外国人という要素も加わったカサノバは、ある種の「マイノリティー」だ。「ガイジンの女社長」という偏見にも似た視線に苦しむことはなかったのか。
04年10月に来日。マーケティングのトップとしてえびフィレオなどを送り出しました。日本マクドナルドはアメリカに次ぐ世界第2の市場。当時も今もワクワクしています。文化の違いに戸惑ったことはないですが、ひとつ驚いたことがあります。日本では会議で、誰がどこに座るか決まっていますよね。一度、会議室に早く着いたので「違うところに座ってみよう」と試したことがあります。「ダメですよ」と注意されました(笑)。
女性であることは、経営計画や戦略を練るうえで間違いなくプラスだと思います。顧客の半分は女性ですから。私どものお客さまは年齢層もさまざまなので、それに見合うバラエティーに富んだスタッフも必要。08年時点で女性店長は7%。それが16年は約24%に増えています。
「数」は一面にすぎませんが、誰もが共に働き一つになって頑張れるようにするのが私の仕事。昇進や大きなプロジェクトなどチャンスがやってきたときは“Say Yes”と伝えています。「まだ準備ができていない」と思うこともあるかもしれませんが、機会が与えられるのは周囲から準備ができていると思われているから。やってみないことには何もわかりませんよね。
家族とともに暮らしているとはいえ、異国で直面した危機。迷ったり自信を失ったりすることはなかったのか。
そんなときは電話で父に相談します。ロシアでのマーケティングマネジャーをオファーされたときも、「家族も友だちもいない、言葉も通じない、スパイ映画でしか見たことのない極寒の地に行くなんて」と心配で父に電話しました。ものすごく興奮して「絶対に受けるべきだ!そんな機会、人生でそうないぞ!」と背中を押してくれた。
それでも疲れたときは、店舗に行きます。エネルギーに満ちていて、お客さまやクルーから元気をもらえる。週末はまだ行ったことがないところに旅行して、そこでも店舗に行くんです。予告なしなので、クルーはこんな感じ(目を丸くして驚くジェスチャー)になりますが。
読書も好きだし、ポケモンGOも好き。だからよく歩きます。
相撲も大好き。子どものころ、スポーツ専門チャンネルで偶然目にしたときは、裸の大人同士がぶつかり合って何をしているのか、まったく理解できませんでした。日本に来てから実際に観戦し、その伝統や力士の名前、性格を知るようになり魅了されました。朝稽古を見に行ったこともあるんですよ。(文中敬称略)
(編集部・市岡ひかり)
※AERA 2017年7月3日号