この問題が報道されてから9日後にやっと開いた記者会見で、黒縁メガネのカサノバが口にした一言に、「だまされたのは消費者だ」と批判が殺到。あの発言を、いまどう思っているのか。
あの日のことはよく覚えています。言葉足らずで誤解を招き、ご心配やご不安をおかけしました。申し訳なく思っています。
記者会見を避けたつもりはありませんでした。重大な事態だと認識していたので、商品の品質を確認したうえで、今後の対策について話そうと考えたのです。そのほうが誠意が伝わるのでは、と。具体的な対策も決まっていない段階で会見するのは失礼だとも思っていました。
ですが、まずは顧客第一の気持ちを表現すべきだった。これは、私たちがずっと心にとどめておくべきことです。さまざまなお客さまと話をして学びました。一番に求められているのは安心感。経緯や対策よりも先に、お子さんを連れてきていたお母さんたちに「マクドナルドの商品は安心です」とお伝えするべきだったのです。
●外食史上最悪の不祥事
15年1月5日には、東奥日報の朝刊が、14年に青森県のマクドナルド三沢店で販売したナゲットに青いビニール片が混入していたと報道。これがSNSを通じてネット上にまたたく間に拡散した。その後、サンデーへのプラスチック片混入なども明らかにされ、同時期の主な異物混入報告は4件。1件は製造機械の部品と判明したが、残りの3件の混入経路はいまもわかっていない。
この問題で業績はまたたく間に暗転。15年12月期の日本マクドナルドHDは、連結決算の最終損益が347億円と01年の上場以来最大の赤字に陥った。米マクドナルドが日本マクドナルドHDの株を売却する、というニュースも飛び交った。
しかし、16年12月期決算では53億円の黒字にV字回復。今年5月には17年12月期の業績見通しを大幅に上方修正し、145億円の黒字を見込んでいる。
株価は上場直後の01年8月以来の高値を付け、今年に入ってNTTドコモのdポイント、楽天の楽天スーパーポイントがマクドナルドの全2900店舗で使えるようになるなど、他社とのコラボレーションも進んでいる。ナショナルマーケティング部上席部長の河野辺孝則によると、こうした声掛けは増加傾向にあるという。
マクドナルドはいかにして「外食史上最悪の不祥事」(アナリスト)を乗り越えたのか。カサノバがしたことは、赤字でも店舗への投資を前倒しし、社員の基本給を上げること。そして、期限切れ鶏肉と異物混入でマクドナルドに来なくなった顧客を訪ね歩くことだった。