騒動後、日本中を回ってマクドナルドに期待することを尋ね歩きました。オーナー、店長、そしてお客さま。お客さまには「奇をてらったことはしなくていい。おいしいハンバーガーとポテトを出して、きれいでモダンで楽しい場所であってほしい」と言っていただいたのですが、15年の段階でお客さまに「モダン」と評されたお店は25%しかなかった。
そこで改装予定を早め、モダンなカフェ調の店舗を70%にまで増加させました。1号店のオープンから45年。老朽化も進んでいました。
社員と約12万人いるクルー、その家族には手紙を出しました。当時は誰もが「この会社はどうなるのか」という不安を抱えていた。いまの日本マクドナルドがどういう状態で、これからどういう対策を取るのかを知って、安心してほしかった。
当時は私自身、とても大変でしたし、ストレスもありました。でも、一番大変だったのは、店頭でお客さまとじかに接していたクルーや店長です。彼らの努力に、感謝と激励の言葉を贈りたかったのです。15年は赤字でしたが、16年は社員の基本給を平均2%増額しました。
15年5月の「マックスマイルの日」にはメニュー表から消えていた「スマイル0円」も復活させました。私たちの最も重要な資産は人。マクドナルドは「ピープルビジネス」ですから。
●ママ友を連れてきて
企業が発信した情報よりも口コミへの信頼度が高まる昨今、一度広まったマイナスイメージを払拭するのは容易なことではない。信頼回復のヒントをくれたのは、問題発覚当初、最も拒否反応を示した顧客──小さな子どもを持つ母親たちだった。
店舗に来なくなった顧客に、どう接触したのか。
カサノバは14年11月以降、地球1周を優に超える4万3500キロという距離を移動し、47都道府県で「タウンミーティングwithママ」を開く。騒動後も来店し続けてくれる母親に来店しなくなったママ友を連れてきてもらい、352人の母親の話を聞いたという。カサノバ自らの発案だった。
日本では、子どもに何を食べさせるのかを決めるのはお母さんであることが多い。だから、彼女たちの話を聞きたかった。最初のタウンミーティングは……そう、茨城でした。当時、マクドナルドに足を運ぶのは、簡単なことではなかったと思うのですが、8人のお母さんが来てくれました。
ご意見は新鮮でした。子どもに食べさせるものなので、原産国から栄養情報、安全性まであらゆる情報が欲しい、簡単にアクセスできる方法はないですか? と。これまでも包装紙にQRコードを付けて原材料を表示していましたが、ハンバーガーを包むので隠れている、と言われました。