レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとってLGBT。性的マイノリティーを表現するために生まれ、定着しつつある言葉だ。しかし、本当にまっすぐ理解されているのだろうか。LGBTとひとくくりにすることで周知は進む一方、さまざまな思いや抱える悩み、課題など、一人ひとりの「個」が塗りつぶされてはいないか。雑誌AERA6月12日号のテーマは「LGBTフレンドリーという幻想」だ。
LGBTをメディアがどう扱ってきたかを取材した特集「おネエしかいらない」では、カルーセル麻紀さんのインタビューを紹介している。
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私は日劇ミュージックホールにも出演していた舞台の人間。だからテレビに関しては干されてもかまわないと思っていたし、嫌なことははっきり「イヤ」と言ってこれまでやってきました。性転換手術のあと東京のテレビの生放送に出た時、街頭インタビューで「カルーセル? 気持ち悪い」という声ばかり集めてきたVTRを見せられて、ふざけるなと机をひっくり返して帰ったことも。足元からカメラで映されて「この人は女でしょうか? 実は男でした」という扱いをされた時も腹が立ちましたね。
バカにされるのは嫌いでけんかっ早くて有名だったから、面と向かって悪口や差別的なことを言われたことはありません。「こういうことを言われたら怒る」ということを、若いADたちに身をもって教えてきたことになりますね。
小さい時から男性が好きで夜の世界に飛び込み、19歳で去勢手術を、1973年にモロッコで性転換手術を受け、2004年に戸籍も女性に変えました。でも、私の本質は男です。私は自分を弁天小僧(女装の大泥棒)の生まれ変わりと思っているし、女性っぽいしぐさも男性っぽいタンカを切ることもできたからテレビの世界でやっていけた。もっとも最近はあまり男性の部分を求められることはなくなりましたが。
性転換手術も戸籍変更も自分のために闘ってきたけど、その姿を見て勇気づけられたと言ってくれる人がいるのはありがたいです。私も小さい時に美輪明宏さんを見て自分の進む道が見えました。美輪さんには、今でも感謝しています。(談)
(構成/編集部・福井洋平)
※AERA 2017年6月12日号